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猫娘の御礼。頼む、助けてくれ!
――――――
(一夜) 『おい! 猫娘ゾンビスタンプは僕だけのものだぞ! しかも『ぞんびーにゃ!』ってなんだよ。ほんとは『ぞーんび! にゃ!』だ! そのスタンプ無料の偽物じゃないか?』
――――――
「あっ……」
僕の口から漏れたのは、驚きだったのか、後悔だったのか。
――――――
(ト死カズ)『お返事くれて、あ・り・が・と・にゃ! つぎは貴方に取り憑くにゃ!! ばーい、にゃ!』
――――――
そして送られてくる写真は、短く刈り込んだ頭から額にかけて、血だらけになり、意識を失っている、トシカズの顔写真――。
――――――
(一夜) 『何だよ……嘘だろ? おい! 僕はゾンビ猫娘を使われるのが嫌なだけなんだ! 返信したつもりじゃない!』
(一夜) 『トシカズ……アイ……次は僕だってのか? 嫌だ! 僕はまだ勝たないといけないトーナメントがあるんだ!!』
(一夜) 『死神って……死神って……』
――――――
イチヤが混乱している。あんなに冷静なイチヤが、恐怖でメッセージを止められない。
――――――
(一夜) 『見てるんだろう! タイチ!!』
――――――
びくっとした。突然名指しの指名に、僕は驚愕を隠せなかった。偶然だろうか?
――――――
(一夜) 『既読の数字がひとつ多いから、気づいていたんだ! なあ……頼む。見ているんなら、この《死神》のやつから、僕を守る方法を検索してくれ! 君はGeeglo検索が得意じゃないか!』
――――――
「もうやってるよ、イチヤ! やってるけれど、何も情報が出てこないんだ!」
僕はスマホの上の指を、動かしたくて仕方なかった。けれどまだ迷いが消えない。だから、代わりに叫ぶしかなかったんだ。
――――――
(一夜) 『……頼むよ……いままでログインしなくて悪かったって、何度も言ってるじゃないか……またタイチとチームを組みたいんだ。だから助けてよぉ……僕だって怖いんだ。頼むから返事をしてくれ』
――――――
再び背筋を冷たい物が走った。
『返事をしてくれ』だって?
ああ、もう認めるよ。僕は極度の神経質なんだ。だからすぐに違和感に気づいてしまう。
これも多分そうだ。イチヤはキーワードを言っている。『返事をしてくれ』が死神の使う呪いの言葉。
僕に返事をさせようと企んだ、ヤツの罠に違いない!
けれど――。二つの理由のプラス・マイナスが足されて、僕は指を動かす気持ちをゼロにされていたんだ。
彼らは僕を裏切った友人であるという、トシカズの時と同じ迷いのマイナス。
そしてイチヤの言う事が本当で、もし僕が返事をしなかったら、彼が死神に襲われてしまうかもしれないという焦りのプラス。
時間はない。どうすればいい?
共にリーグを勝ち進んで、ハイタッチをしたイチヤ。僕に剣技や魔術のスキルと使い方を教えてくれたイチヤ。あんな充実した時間は他に無かった。
くそ! じゃあどうして!! 僕を延々と無視したりしたんだ!!!
決心が固まりそうで揺らぎ、直立しそうで傾く。
もう間に合わないかもしれない! その最後のひと押しで、僕は自分の指に力を入れようとした。その矢先だった。
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