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幼馴染の選択
――――――
(マリア) 『タイチ、返事をしないで』
――――――
「え……」
僕の口から出たのはその短い一言だけだった。
――――――
(マリア) 『聞いてるよね、タイチ。いつも言ってるでしょう。《私に任せて》って。だから今回も私がやるから』
(マリア) 『ねえ、イチヤ。私が助けてあげる。怖がらなくていいんだよ(*^^*)』
――――――
あっという間だった。マリアが送った最後の笑顔のマークが画面に出るまで、僕はひと息すら吸えなかった。
もちろん止めようと思っても、この部屋からは何もできない。
――――――
(一血夜) 『……ふふ、ありがとう。狙いは君じゃなかったけれど、さっきから気になっていたんだよ。何よりも君は、タイチくんより、柔らかくて美味しそうだ……』
――――――
イチヤのメッセージはそこで終わった。最後に、血を吸われたみたいに、カラカラに細くなったイチヤの顔写真が送信されてきた。
僕は胸が張り裂けそうになった。彼には悪いけれど、イチヤの悲惨な写真を見たからじゃなかった。
今度こそ僕の指は、迷う事なくスマホの画面をスワイプしていた。
――――――
(大智) 『マリア!! マリア!!』
(マリア) 『……タイチ』
(大智) 『大丈夫か!!』
(マリア) 『うん……いまのところ、平気みたい』
(大智) 『良かった!! いま、どこにいるの?』
(マリア) 『……自分の部屋だよ。こんな時間だもん』
(大智) 『早く両親を呼ぶんだ! 事情を説明して!』
(マリア) 『今日は二人とも家にいないんだ。温泉旅行だって』
(大智) 『チクショウ……こんな時に限って! じゃあせめて下のリビングにいた方いいかも!』
(マリア) 『うん……』
(大智) 『警察にも電話して!』
(マリア) 『……』
(大智) 『マリア? どうしたの?』
(マリア) 『……』
(大智) 『マリア!!』
(マリア) 『……んと……もう遅いかもしれない……体がうまく動かないの』
(大智) 『!!』
(マリア) 『みんな、こんな感じで死神に襲われたのかな……怖くなかったのかな……』
(大智) 『待って! 諦めちゃ駄目だ!!』
(マリア) 『ううん。もうダメかも。手が……ゆっくりしか……うごかない。わたし……の指じゃない……みたい……』
(大智) 『マリア!! しっかりして!!』
(マリア) 『……タイチ。もう、へんじをしないで……。あなたも……あぶないから……』
(大智) 『そうだ! 家にいるって言ったよな! 気づかなかった。すぐ近くじゃないか。これから行くから待ってろ!!』
(マリア) 『……いいよ。あぶない……それより……タイチが……げんき……よかった……わたし、とても心配し……た……から』
(大智) 『今はそんな事言ってる場合じゃないだろ!!』
(マリア) 『ぶったこと……怒ってるよね……ごめん……アイが来月に……ひっこすって……そのまえにあなたに、どうしても……気持ち……伝えたいって……いったから』
(大智) 『え!! アイが? 嘘だろ……』
(マリア) 『タイチがまじめに……聞いてないから、カッとなってつい……。でもね、ホッとしたの……だってタイチの……アイへのきもち……聞くのが怖かったから』
(大智) 『え?』
(マリア) 『でもこうなったら……どうでもいいや……けれど……いまならこたえ、くれる……? タイチのきもち……どうだったかって……聞いてから……それならしんでも……いいや……』
(大智) 『駄目だ! いま行くから!』
(マリア) 『まにあわないかも……ふふ、もう……わたし……しにがみかも。だって……わたしあなたに……返事、聞いて……るよ? 騙されないで……ね』
(大智) 『まさか!!』
(マリア) 『……はやく……スマホを切って……そして二度とそこから……出てこなくていい……からさ……安全な……そこか……ら……』
(大智) 『……マ……』
(マリア) 『ん?』
(大智) 『……マリア……』
(マリア) 『……なあ……に?』
(大智) 『俺は……俺はさ……アイには悪いけど……悪いんだけどさ!!』
(マリア) 『……』
(大智) 『ずっと、ずっと前から、お前だけを助けたかったんだっっっ!!!!!!』
(マリア) 『……』
(大智) 『……』
(マリア) 『……ああ、返事……しちゃったね……じゃあ……誰か……きたから……モウ、オシ……マイ』
(大智) 『駄目だ! 駄目だ!!』
(魔リア) 『アリ……ガトウ……嬉シカッタ……ヨ……、タイチ……』
(大智) 『!!!!』
――――――
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