四人の親友

2/2
前へ
/15ページ
次へ
 アイは一番良くわからない。  いつも、僕らの一人でも見つければ、小鳥みたいに飛んできて、声がかすれるまで喋りかけてくる。  ウザいと感じる時もあったけど、僕たちはいつの間にか、それがアイなんだと受け入れていた。  けれど一ヶ月前ぐらいから突然、喋らなくなった。トシカズにもイチヤにも喋るのに、僕だけにはてんで話しかけなくなった。  それどころか目が合うと逃げるようになった。さすがに僕はムカついた。なあ、僕はそんなに嫌われるぐらいむごい何か、したのかよ?  輪をかけてひどいのは、最後のマリアだ。  彼女だけは保育園からずっと一緒に大きくなってきた間柄(あいだがら)。  小さな頃から『世話好きのお姉さん』キャラだった。園では僕の出したおもちゃの片付けから、お迎え前の荷物の準備まで、いつも一緒にやってくれた。  喧嘩する時だって、止めようとしながらも、いつもマリアは僕の側に立って助けてくれた。  だから、彼女の存在は――悪い言い方をすれば――当たり前になっていた。  ところがその関係が一ヶ月前、急に途切れてしまったんだ。  それは僕がアイに何か話された時の事だった。  正直その時は、アイがまた差し障りの無い話題を喋ってるんだろうなと思って、半分以上は無視してしまった。その時の仕草はとても冷たく、手を払うようにして、シッ、シッって。  突然の平手打ちが襲ってきて、僕は思いっきり吹っ飛んだ。  頬を押さえ、目に星を浮かべていると、それを放った人物が叫んだ。 「馬鹿!!」  僕の頬を打ったのは、誰でもない。マリアだった。  彼女はとても怒っていて、唇が震えていた。すごく何かを言いたそうだったけれど、感極まってポロリとひと粒だけ涙を流した後、黙って行ってしまった。  それ以来、彼女とはまったく口を利いていない。  どうだい、この裏切りと暴力の数々。僕が心の病気になって引きこもるのも、納得できるだろう?
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加