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恐怖の始まり
え、これだけ? 何のことかわからない。
メッセージの横にある時刻を見ると、十分前となっていた。ほんの少し前だ。
トシカズから追加で推測とか意見とか、そんなメッセージは送られてきていない。とりあえず共有――以上。素朴なヤツらしい行動だった。
いつもならここで、お笑いタレントの台詞スタンプで『それで?』って返すんだけれど、いまは出来ない。関係は断絶されているんだから。
気になって眠気も覚めてきた。誰か返さないかとイライラしていると、早速返事があった。
――――――
(あい) 『ナニコレ~?』
――――――
いま公開している映画の主人公でお姫様のキラキラスタンプ。アイだった。お喋りは反応も早い。
――――――
(トシカズ)『わからない。突然きた』
(あい) 『ダレから?』
(トシカズ)『雪谷から』
――――――
雪谷は同じクラスの男子だ。サッカーが得意でフォワードとして活躍している。ただし隣町のサッカークラブでの話。そのチームに移籍したトシカズとは、友達として繋がっているみたいだ。
――――――
(あい) 『いきなり来たの~?』
(トシカズ)『うん、意味分かんない』
(一夜) 『ぞーんび! にゃ!』
――――――
いきなり一夜が入ってきた。しかも挨拶代わりの猫娘ゾンビスタンプとか、意味がわからない。しかもこのキャラはイチヤのお気に入りだったりする。
――――――
(一夜) 『名探偵登場……って、これ何! 意味不明なんっすけど!!』
――――――
イチヤはSNSの中だけはやたらと話す。おそらく、いろんな性格のキャラになりきって、喋ってるんだと思う。
――――――
(トシカズ)『うん、意味分かんないんだよ。だから相談したくて』
(一夜) 『雪谷からワレタって!! 何か暗号かなあ?!?!』
(あい) 『いーちーキーた! ばんこんわ~』
――――――
若干、アイだけが一人ずれている気がする……そこへさらにメンバーのラスト一人がやってくる。僕は何故かドキッとした。
――――――
(マリア) 『ねむーい。わお。みんな揃ってなに盛りあがってるの?』
(トシカズ)『おーマリアだ。』
(あい) 『まりまり~★』
(一夜) 『にゃー! 揃ったね!! あ、一人足らないけど!』
(マリア) 『いま見たよ……うん、イチヤに賛成。イミフだね。これだけ?』
(トシカズ)『うん、そうなんだよ。あ! まって、また続きが来たみたい』
(あい) 『ワクワク~♪』
(一夜) 『(我は黙して待つナリ……)』
(マリア) 『……』
――――――
僕も待っているうちの一人。その間にビニール袋の山から、飲みかけのペットボトルを探し出し、あぐらをかいた脚の上に置いた。
メッセージが来ない。遅いな……トシカズ。
パンタグレープのフタをひねって開けようとした時、送られてきた次の画像を見て、僕の手が止まってしまった。
――――――
(画像の中のメッセージ)『オソワレタ……ニゲラレナイ……』
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