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「いや、いいよ。さすがにそれは」
僕は手を振り、マコトの提案に断りを入れた。
「こっちとしては、今日のライブに誘ってくれただけでも有り難い話なんだしさ。
その上、グッズをおごってもらうとかはさすがに悪いよ。
マコトのその気持ちだけ、俺は受け取っておくよ。ありがと」
「いいよ、別に。
私、お金ならそれなりにあるからさ」
しかし、マコトは何故か重ねて僕に尋ねてくる。
「いい、いい。ホント大丈夫だから。
思い出なら、グッズを買うとかじゃなく、今日この目でじっくり焼き付けておくよ」
僕はマコトの提案を、やんわりとながらも再度突っぱねた。
すると、マコトは「……そう」と、僕が思った以上の悲しげな表情を浮かばせた。
「じゃ、私。グッズ、先に買ってくるね」
そして、マコトは僕を置き去りにするように、そそくさと販売スペースであるカウンターへと行き、グッズを購入しにいってしまう。
「……俺もストラップ、買おうかな」
一人置いてけぼりとなってしまった格好の僕は、取り敢えず体裁を保つ為に販売スペースであるカウンターへと歩を向ける。
その時であった。
「タクヤ、ストラップ買ったよー」
既に、販売スペースにてグッズの購入をしていたマコトは振り返り僕の方を見ると、少女のように無邪気な声を上げる事で僕のその動きを制止した。
「はい、これ。
タクヤの分の、ストラップ」
グッズのタオルを首からかけ、結局購入へと至ったTシャツや、他のグッズが入ったエコバッグを右手に持ちながらマコトは引き返してくると、ストラップを僕に手渡す。
「あぁ、ありがと……」
僕はマコトからストラップを受け取ると、立て替えてもらった代金を支払う為、カーゴパンツの後ろポケットに入っている財布を取り出した。
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