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「いい、いい。
ストラップくらいなら、おごってあげるから」
すると、マコトは左手の掌を突き出す事で、僕のその動きを制した。
「たかが、800円くらいなんだしさ。
ストラップくらいは、大人しくおごってもらっておきなよ。
それに私、さっきも言ったようにお金ならそれなりにあるから。
別に、タクヤがそんな気にする事はないんだよ、ホント」
「……じゃ、ゴメン。おごってもらっておくわ」
僕はマコトに対して小さく頭を下げると、もらったストラップを無造作にカーゴパンツのポケットへと入れた。
「まっ、タクヤには今回来てくれた件とか、Twitterで面白おかしくやり取りしてもらったりとか、色々お世話になってるからね。
ストラップくらいなら、おごってもいいかな、って思ってたんだよ」
「まぁ、そういう事なら……」
僕は、今日何回目であるか分からない愛想笑いを浮かばせると、マコトと二人でグッズ売場を後にし、しばらくライブハウス周辺を徘徊する。
「確か、この近くにクレープ屋さんがあるらしいんだよね……」
マコトはキョロキョロと辺りを見回しながら、先程口にしたクレープ屋を探す。
「へぇ」
「良かったら、クレープ食べない?
まだ、開場まで時間はあるしさ。
私、おごるから」
「いや、待ってよ。待って」
マコトの言動に違和感を覚えた僕は、苦笑交じりに突っ込みを入れる。
「もう、割り勘でいいじゃない。
そんな、何でもかんでもおごってくれなくてもいいよ。
いくら俺が、今月そんな持ち合わせが無い、っていっても、さすがにクレープを食うくらいの金ならあるからさ」
「あっ、割り勘ね……」
すると、僕の言葉が想像の範囲外であったのか、マコトは即答せず顎に手をあて、そのまま思考へと入った。
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