●イッサイガッサイ

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「男なんて皆、こっちの気を惹こうと思って適当にいい事を言うけど、いざこっちが振り向いたら途端に手のひら返す生き物なんだから」 マコトは白けた声で独白するように言うと、ゆっくりと車窓から僕に視線を移した。 「タクヤも、私から離れていくんでしょ? 昨日、あんな事があったし」 「いや、俺は……」 昨日のなまめかしいマコトの姿が脳裏をよぎったが、僕はかぶりを振る事でそれを取り払い、マコトを見据えながら言葉を続けていく。 「昨日も言ったじゃねえかよ。 マコトとは、『このままでいたい』ってよ。 昨日は確かに、おかしな事があったよ。 でもよ、アレはアレ、って感じでお互いまた友達として付き合っていこうよ。 二人で温泉に行きたい、ってマコトも言ってたんだしよ」 「……そんな事も言ってたね、私」 マコトは、ふぅ、とため息をついた。 そして、再び車窓に視線を戻すと、マコトはため息を続けて吐きながら、車窓の向こうに流れる掛川の景色を見つめていた。 「……ゴメン」 が、数分後。 込み上げる涙でもこらえているのか、マコトは車窓を見つめたままながら、震え声で言葉を述べていった。 「何か、変な空気にさせちゃってさ……。 でもね、あの時の私。 ああするしか、出来なかったの……。 タクヤは、私が作ったその流れに応えただけだよね……。 何一つ、悪くないよ。 謝るのは、完全に私だよ……。 私がもっとしっかりしていれば、あんな事にはならなかったんだしさ」 僕は言葉を返す事が出来ず、車窓に映るマコトの顔をただ見つめるのみである。
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