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●友達のままで
ライブハウスで見た米倉翔吾のライブは、最高の一言であった。
「実はデビューして、すぐにアリーナからドームって感じでツアーをしていったので、ライブハウスを回ってのツアーってやった事が無かったんです!
お客さんの顔もよく見えるし、みんなからの熱い想いを受け取って、最高のパフォーマンスを返したいと思います!」
写真やその歌い方から、ダウナーな雰囲気のある米倉翔吾であるが、ライブでのパフォーマンスは熱血漢そのもの。
そして、一曲一曲を魂を込めるように間近で歌う米倉翔吾のその様は、ファンである僕の心を改めて魅了させた。
「凄い良かった、サイコー!」
予定されていた曲目が全て終了し、ライブハウス内に照明がともりだすと、興奮しきっているマコトは口角泡を飛ばしそうな勢いで僕に対して捲し立てた。
「一曲目から、『バイバイtyphoon』とか『明日へのtrain』とか『アジサイ』とか、ヒット曲連続でするんだもん!
アレ、今の米倉翔吾的には最強のコンボだよね!
新曲もいい感じだったし、アルバム今すぐにでも聴きたくなった!」
米倉翔吾は、タイトルこそ未定ながらアルバムを発売するとこのツアーの最中に告知しており、そのアルバムのプロモーションであるドームツアーも秋から行うと、先日ホームページ上にて発表していた。
「ボカロP時代の曲も、何曲かやっていたよね?」
同じく興奮が冷めやらない僕は、マコトの熱狂に乗る形で言葉を返す。
「『ドリームファクトリー』でしょ?」
マコトは、クイズの解答者みたく曲名を述べると、再び僕に対して捲し立てた。
「私、米倉さんが『こめ』って名前の時から知ってるから、ボカロPの時の曲をやってくれるのホント嬉しいの!
『ドリームファクトリー』はメジャーな曲だし、米倉翔吾名義のアルバムにも入ってるから知ってる人も多いんだけど、『4月の水槽』とかは本当に『こめ』の時を知らないと分からない曲だから、やってくれた時は鳥肌立っちゃったよ!」
「何か、すんげぇ楽しそうだから、俺も楽しいよ。
やっぱ、マコトとライブ行って良かった」
やり取りをまとめるように僕は言うと、退場していく客の流れにマコトと共について行く。
「ってか、『こめ』の時の曲とか、今までだったら『ドリームファクトリー』くらいしかやらなかったでしょ!」
どうやら、マコトは僕以上に興奮しているらしく、ライブ会場から退場するまでの間、ミクスチャーアーティストのように言葉を次々と並べていく。
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