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「ライブ始まる前、タクヤ。
私の事を男だと思ってこれからも接していく、って言ってたじゃん。
それに、夜更かししたら体力持たないとか、何かオッサンみたいなんですけど」
僕の素っ気ない態度に腹を立てたのか、唇を尖らせながら言うマコト。
そして、皮肉にもマコトの拗ねているその様は、「男」ではなく「女の子」そのものであった。
「運送会社の倉庫でバイトしてんだよ。
荷物が重いから、結構体力も消耗するしね。
まぁ、その分時給もいいけどね」
苦笑交じりに事情を説明すると、僕はマコトと二人でライブハウスを後にした。
「つーか、人に晩ごはん食べに行こうって誘ってるけど、そっちは大丈夫なのかよ」
そして、同じく腰にぶら下げていたペットボトルのジンジャエールを飲み切ると、僕はマコトに対して訊く。
「あっ、私は大丈夫。
基本、家に引きこもってるから、夜更かしとかしても別に大丈夫なんだ」
事も無げにマコトは言うと、僕と同じくペットボトルに入っているコーラを飲み切り、ゴミ箱を探しているのかキョロキョロと辺りを見回す。
「大学行ったりとか、働いたりとかしてないの?」
1年以上Twitterで繋がっているというのに、その私生活を殆ど知らなかった僕は、この機とばかりにマコトに対して訊く。
「んー、その辺りはあまり深くは言えないんだけど……」
空になったペットボトルをごまかすように弄びながら、マコトは言葉を返していった。
「まっ、ニートではないのは確かだよ。
一応、それなりに働いてるからさ。
今はその……、家に引きこもってるってだけ。
まっ、今ちょうど、そういうサイクルに入ってるってだけだから、別にそんな珍しい話じゃないよ」
「ふーん」
どうにもスッキリとしないマコトの物言いだったが、僕はそれ以上詮索をせず、取り敢えずコインロッカーへと歩を進めていった。
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