●友達のままで

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コインロッカーで、預けていたPORTERのバッグをマコトが取り出すと、もはや僕ら二人には「帰宅」というイベントしか残されていなかった。 「じゃあ、LINEでまた俺の住所と本名送るからさ。 『こめ』の時のアルバム、着払いで送るなり何なりしてよ。 もし、また会えるのなら、その時に持ってきてもらってもいいし」 駅まで歩を進めている間、僕は沈黙を避ける為、マコトに対して言葉を述べていく。 しかし、マコトは僕と違い沈黙を歓迎しているのか。 ライブ後に見せていた興奮がまるで嘘であるかのように、マコトは塞ぎこんだまま言葉を発そうとはしなかった。 「……マコト?」 僕は歩くスピードを緩め、マコトの横顔を覗き見る。 「もう、帰るの?」 マコトはデスマスクのように感情を押し殺した表情でもって、僕に対して問いかけた。 「まぁ、明日大学に出なきゃいけないしね」 僕は眉尻を下げながら、言葉を返す。 「ちょっとでいいから、付き合ってよ。 タクヤ、私の事をこれからも『男』として接していく、って言ったでしょ。 だったら、晩ごはんくらい付き合えるでしょ」 「でもなぁ……」 実は言うと、僕が頑なに「帰る」と言っていたのは、持ち合わせが2000円程しか無いという事情があったからだ。 「お金無いから、もう『帰る』って言ってんじゃないの?」 マコトは、僕の心を読み取ったかのような、正鵠を射た言葉を述べる。 「いや、まぁ……」 「おごってあげるよ。 いや、おごってもらうのが嫌なら貸してあげるよ。 だからさ、晩ごはんくらい付き合ってよ。 こっちはさ、家に帰っても一人だから、少しでも誰かと長くいたいんだよ。 それが彼氏だろうが、Twitterで今日知り合った男だろうが、誰とでもね」
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