●伝えたいことがあるんだ

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「あまり、自分だけで全部抱え込むと、マコトに限らず人間誰だって潰れちまうからよ……。 無理して、そんな元気そうに振る舞わなくていいんだよ。 さっき言ったみたく、マコトが心理的にヤバいと思った時点で、『友達』として話ならいくらでも聞いてやるから、あんま無理すんなよな」 「あー、やめて。 これ以上、泣かせないで欲しいな」 マコトはフフフと笑うと、再び鼻をすすった。 「ってか、タクヤのこういう優しいトコ、広田くんにも見習って欲しいなぁ。 あの子、ホント私とヤル事しか考えてないっぽいしね。 二人でいても喋らずに、ずっとスマホいじったりとかしてるし、コイツと付き合って大丈夫かな、って思う時が結構あるよ」 「それについては俺から謝るわ、ゴメン」 マコトの言葉に、僕は自分が合コンで広田を紹介した、という事もあり、呆れると共に軽い怒りも覚えた。 「タクヤが謝る必要は一切無いよ。 悪いのは広田くんと、それが分かってて付き合った私なんだから」 マコトは微笑交じりに述べると 「ゴメン、そろそろ電話切るね」 と、続けて言った。 「まぁ、マコトからのレスポンスがあるかどうかはともかく、借りてるお金とかCDに関しては、また連絡させてもらうよ。 いつまでも借りっぱなし、ってのは俺的にも何か気持ち悪いしよ」 「分かった」 マコトは返答する。 そして、お互いが「じゃあ」と区切りの言葉を述べると、マコトは電話を切った。 電話を切ると、トイレ内は先程のマコトとのやり取りが嘘であるかのように、しんと静まり返った。 毎日、この場所で排泄を行っているのだが、このトイレはここまで静かな空間だっただろうか。 そう思える程の、静けさであった。 僕は、結露がこびりついたスマートフォンを耳から離すと、その流れで現在時刻を確認する。
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