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スマートフォンの液晶画面には、「02:24」と表示されていた。
やれやれ、どうりで静かなハズだ。
サラリーマンも主婦も子供も、街の住民のその殆どが就寝についている時間であり、起きているのは僕やマコトのように煩悶を抱えている若者くらいであろう。
僕はトイレを出ると、その足で寝室に戻り、スマートフォンを再び充電する。
そして、ベッドに横になると、僕は先程のマコトが語ってくれた話の内容を一つ二つ思い返していった。
「マコト、広田と付き合い始めたんだな……」
照明の消えた真っ暗な寝室で、僕はその事実を噛みしめるようにポツリと呟いた。
その流れは、僕にとって予想外の流れであった。
が、冷静に振り返ってみるとある意味必然の流れであったのかもしれない。
合コンが出来そうという話をマコトの口から聞いた時、マコトは
『広田くんって、イケメンなの?』
と、訊いてきたりしていた。
僕を除く、あの日の合コンのメンツも、広田の他には女慣れしていない森と田渕であったし、広田の方も「すげえ、可愛い」と、マコトを絶賛していた。
何より、あの日のマコトは誰かと付き合おうという気持ちを抱いていたからこそ、普段とは真逆の「女の子」然とした服装をしてきたのではないのか。
マコトのあの日の服装や仕草は、リアルで会話を交わしたりTwitterで頻繁にやり取りしていた僕でさえも、思わずドキリとしたモノだ。
「しかし、よりによって本当に広田と付き合うかよ……」
僕は再び、独りごちる。
合コンを行った後、僕は広田とマコトが付き合う事をどこか危惧していた。
そして、図らずも僕のその危惧は現実のモノとなってしまった。
広田は一人の女を、長く愛せないタイプの人間だ。
その広田と付き合って、マコトが幸せになれるとは僕にはとても思えない。
──もし、広田がマコトを泣かすような下らねえ真似したら、俺は広田をマコトの「友達」として殴るかもしれねえな。
僕は思うと、ゴロリと寝返りを打った。
「米倉翔吾のチケット、どうしようかな……」
そして、一枚余ったチケットの事を思いながら、僕は睡魔を呼び込む為、ボンヤリとした状態でスマートフォンをただただ触っていた。
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