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「その『友達』が、広田くんに泣かされなければいいんだけどね……」
白石は肩をすくめる。
しかし、ここで何かを思い出したのか、白石は蒸し鶏のサラダを一口食べた後、僕の顔をまじまじと見つめてきた。
「じゃあ、有岡くんは今、完全に『フリー』って事だよね。
マコトさん、広田くんと付き合い出したんだし」
僕の目をじっと見つめながら問い掛けてくる、白石。
「あっ、まぁな……」
その白石の視線に耐えきれなくなった僕は、ごまかすように横を向いた。
さすがに、恋愛感情を抱いている相手からここまで見つめられると、普段から「感情の起伏が薄い」と言われている僕でも動揺を抑えきれない。
「じゃあさ、有岡くんもマコトさんみたいに、彼女作っちゃえばいいんじゃない?
それなら、お互い恋人がいるって事で、いい友達関係を続けられると思うんだけど」
「そうしたいけど、相手がいないよ」
僕は、乾いた笑い声をあげた。
「前のマコトの合コンでも、仕切んのが精一杯で、殆ど女の子と喋れなかったしさ。
大学とかバイト先でも、そんな感じになりそうな子は見当たらないし、当分俺は『ぼっち』を続けていくよ」
「そっか……」
白石は、ふぅと息をつくと、ほうれん草のおひたしを食べる。
「つーか、マコトの話をしてて思い出したよ。
実は、それでちょっと困った事があんだよな」
「何?」
僕の言葉に、白石は顔を上げる。
「いや、実はマコトと行く予定だった、米倉翔吾のライブのチケットが一枚余ってんだよ。
マコトも、広田と付き合い始めたばっか、ってのもあって、
『タクヤとは行けない』
って断ってきたから、どうしようかな、と思って……」
「あっ、それならちょうど良かった」
白石は両手を組み合わせ柔和な笑顔を浮かばせると、弾んだ声色で次の句を述べた。
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