●ドキドキ

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「その『友達』が、広田くんに泣かされなければいいんだけどね……」 白石は肩をすくめる。 しかし、ここで何かを思い出したのか、白石は蒸し鶏のサラダを一口食べた後、僕の顔をまじまじと見つめてきた。 「じゃあ、有岡くんは今、完全に『フリー』って事だよね。 マコトさん、広田くんと付き合い出したんだし」 僕の目をじっと見つめながら問い掛けてくる、白石。 「あっ、まぁな……」 その白石の視線に耐えきれなくなった僕は、ごまかすように横を向いた。 さすがに、恋愛感情を抱いている相手からここまで見つめられると、普段から「感情の起伏が薄い」と言われている僕でも動揺を抑えきれない。 「じゃあさ、有岡くんもマコトさんみたいに、彼女作っちゃえばいいんじゃない? それなら、お互い恋人がいるって事で、いい友達関係を続けられると思うんだけど」 「そうしたいけど、相手がいないよ」 僕は、乾いた笑い声をあげた。 「前のマコトの合コンでも、仕切んのが精一杯で、殆ど女の子と喋れなかったしさ。 大学とかバイト先でも、そんな感じになりそうな子は見当たらないし、当分俺は『ぼっち』を続けていくよ」 「そっか……」 白石は、ふぅと息をつくと、ほうれん草のおひたしを食べる。 「つーか、マコトの話をしてて思い出したよ。 実は、それでちょっと困った事があんだよな」 「何?」 僕の言葉に、白石は顔を上げる。 「いや、実はマコトと行く予定だった、米倉翔吾のライブのチケットが一枚余ってんだよ。 マコトも、広田と付き合い始めたばっか、ってのもあって、 『タクヤとは行けない』 って断ってきたから、どうしようかな、と思って……」 「あっ、それならちょうど良かった」 白石は両手を組み合わせ柔和な笑顔を浮かばせると、弾んだ声色で次の句を述べた。
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