●ドキドキ

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「実はキヨミ。 最近、米倉翔吾に興味を持ち始めて、もしライブとか行けるんだったら行ってみたい、って言ってたのね。 だから、チケットが余って困ってるんだったら、キヨミに話を持ちかけてみるけど」 「本当に?」 白石のその言葉に、僕の心は高鳴った。 最悪、僕は 「リアルでは、SNSで知り合った人間とは会わない」 というマイルールを破ってまで、Twitterでライブの同行者を募ろうと思っていたので、白石のこの提案はまさに「渡りに舟」であった。 「ちなみに、日にちはいつ?」 白石が訊く。 「あっ、今月の末の日曜。 秋のドームツアーの最終日なんだ」 「OK」 白石は片目をつむると、スマートフォンを取り出し、人差し指を素早く動かした。 「今、キヨミにLINE送った。 多分、大丈夫だと思うけど、有岡くんちょっとチケットどうするか待ってて」 「あっ、うん……」 僕は頷くと、以前「根本会」に来ていた三浦キヨミがどのような女の子であったか、記憶を掘り起こしていった。 「でも、マコトさんも何かスパッって感じで、有岡くんから距離を置いちゃったね……」 白石はワカメスープを飲み切ると、言葉を選ぶように独白めいた語りをしていく。 「マコトさんも、有岡くんとは友達って言ってたのに、静岡で色んな事があってから急に有岡くんから距離を置いて、その結果 『彼氏が出来たから、ライブに行けなくなった』 でしょ。 うーん、マコトさんの言ってる事は分かるんだけど、そこはどうなんだろね。 行けないなら単純に断ればいいだけの話だし、何でそうしなかったんだろ」 「多分、マコトも彼氏が出来た、ってので、気を使ってんだろ。 断るにしても、広田と付き合い始めたばっかだから俺と頻繁にLINEをやり取りするのはどうかな、って洩らしていたからよ。 ライブの件は、マコトの事情も訊かずにチケット二枚を先走って取った俺も悪いかもしれない」 「そうなんだろうけど……」 白石が返答すると、テーブルの上に置かれたままでいたスマートフォンが身震いする事で通知を告げた。 白石は手帳型のケースを開き、スマートフォンに届けられた通知を見ると、ニンマリとした笑顔を浮かばせた。 「キヨミ、月末のライブOKだって」 そして、白石は事が上手くいったアピールとばかりに口角を上げながら、僕に向かって言った。
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