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「……ですね」
僕の言葉に、三浦キヨミは納得するようにゆっくりと頷いた。
「で、有岡さんにとって、もっとも気心が合う人間がマコトさんだった、って訳ですね」
そして、三浦キヨミはここで再びマコトの名前を出してくる。
「まぁ、そういう事になるな」
再び登場したマコトの名前に、僕はやや面食らったが、それをおくびに出さず答えた。
「あの、もしなんですけど……」
三浦キヨミは顔を上げ、僕に目をやると、おそるおそるといった感じで尋ねてきた。
「もし、有岡さんが誰か他の女の子と付き合いだしたとしたら、マコトさんとはどういう付き合い方をしていきますか?」
「うーん、そうだなぁ……」
三浦キヨミの質問に、僕は左手を顎にやり、しばし考え込んだ。
「多分、直接会う、って事は無くなるんじゃないかな……。
会っても、その付き合ってる彼女に『会ってくる』って一言言うか、彼女と二人で一緒に会うかのどっちかかも。
やり取りも、SNS上でのやり取りが中心になるかもだけど、多分マコトが俺に対して気を使ってるみたいに、頻繁にやり取りする事は無くなるかもだね。
もちろん、お互いがフリーになったら、またやり取りは活発になると思うけど」
「……そうですか」
僕の話を聞き終えた三浦キヨミは言葉を返すと、ふぅと息をつく。
その様子は、どこか不満げ、といった様子であった。
「っていうか、有岡さんってホント正直な人ですよね。
嘘がつけない、っていうか、浮気が出来ないタイプっていうか」
しかし、三浦キヨミは再び顔を上げると、気持ちを切り替えたといった感じで、晴れやかな笑顔を浮かばせながら言った。
「まぁ、それはよく言われるよ。
信也とか広田とか辺りには、特によ」
「あの、有岡さんってよく食堂で本読んでるじゃないですか?
アレって、どんな本読んでるんですか?
アタシも本、ちょっと読んだりするので他の人がどんな本読むのか、訊いてみたいんです」
そして、三浦キヨミは先程の笑顔を保ったまま、僕との会話が途切れさせたくないのか、ちぎっては投げといった感じで次々と矢継ぎ早に言葉をぶつけてきた。
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