●クリスマスキャロルが流れる頃に

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「マコト、そこにいねえか?」 その電話が広田から掛かってきたのは、年末の28日の事であった。 その時、僕はキヨミと「二人だけのクリスマス」をダイニングレストランで行っており、マコトとは一緒にいるどころか会ってもいなかった。 「いねえよ」 僕は返すと、「何かあったのか?」と言葉を続け、広田に問い掛ける。 「あったから、訊いてんだよ」 広田の声は、明らかに苛立ちが込められていた。 「アイツ、クリスマスに会う約束してもドタキャンしやがるわ、電話とかLINEしても全部無視しやがるんだよ。 有岡、お前何か知ってんじゃねえのか? マコト、お前に絶対に何か言ってるだろ」 「知らねえよ……」 先月の電話でのやり取り以降マコトと一切接触をしていなかった僕は、こう返答するしかなかった。 「お前、何か隠してんじゃねえのか!」 電話の向こうの広田は、怒声を上げた。 「お前、裏でマコトと何かやり取りしてんだろ! じゃなきゃ、こんな逃げるようなフェードアウトとかあり得ねえだろ! 正直に言えや! マコト、本当はそこにいるんだろがぁ!」 「ここにいるのは、キヨミだけだよ」 僕は、淡々と広田に現状を告げた。 「そんで、そのキヨミと今、二人だけのクリスマスをやっているトコ。 マコトとは会うどころか、電話もLINEもしちゃいねえよ」 続けて言うと、僕は身の潔白を証明する為、今、自分とキヨミがいる店の名前と場所を広田に告げた。 「疑うのなら、今すぐココに来いよ。 まっ、お前がどれだけ店の中探し回っても、マコトはいねえけどな」 「……そうか」 僕の言葉を信じたのか、広田は先程の感情の高ぶりが嘘であるかのように消沈した。 「疑って悪かったな」 そして、広田は続けて詫びの言葉を述べる。 「気にすんな。 マコトはそういうトコロがあるからよ」 冷ややかに、電話での僕のやり取りを見つめているキヨミの視線を左頬に受けながら、僕は言葉を続けていく。
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