【第一部】 ──青年──

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よく、漫画やラノベとかで、男だと思っていた登場人物が実は女だと分かり 「お、お前、女だったのかー!」 ってな展開があるけど、実際にそれを目にすると、人は大抵言葉を失うモノだ。 「マコトです」 マコトは自分の名前を名乗った後、続けざまに 「タクヤくん、だよね……?」 と、おそるおそるといった口調で僕に訊いた。 「えっ、あっ……」 「Dickiesのキャップをかぶって、ベンチに座ってるって、LINEに書いてたから」 微笑を浮かばせながらマコトは言うと、あざとく小首をかしげる。 「いや、待って。待って」 僕は公園のベンチから立ち上がると、目の前に立っている「マコト」と名乗る少女の顔を見据え、言葉を震わせながら訊いた。 「マコトって……、女だったの?」 「あっ、うん。実は……」 誰かが冷蔵庫にキープしていたプリンを食べたようなバツの悪い顔つきで、マコトはたどたどしく言葉を返した。 「あんだけツイートじゃ、『僕は』とか『俺は』とか、って言ってたじゃん。 こっちが下ネタ言っても、バンバン拾って返してくれてたし」 「私、結構下ネタいける方だよ」 微妙にずれた答えをマコトは返すと、斜めがけしていたPORTERのバッグからチケットを取り出し、それを僕に手渡す。 「取り敢えず、これ。タクヤの分。 詳しい事は、後で歩きながら話すよ」 言い終えたマコトは、腕時計で時刻を確認すると、再び僕に視線を戻した。 「じゃ、まずはグッズ売り場にいこうか。 昨日、そういう感じでやり取りしてたもんね」 年齢が一つ上だという事もあり、仕切ってくれるマコト。 そのマコトの様は、普段Twitterで見せている、「いつものしっかりとしたマコト」そのものであった。
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