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よく、漫画やラノベとかで、男だと思っていた登場人物が実は女だと分かり
「お、お前、女だったのかー!」
ってな展開があるけど、実際にそれを目にすると、人は大抵言葉を失うモノだ。
「マコトです」
マコトは自分の名前を名乗った後、続けざまに
「タクヤくん、だよね……?」
と、おそるおそるといった口調で僕に訊いた。
「えっ、あっ……」
「Dickiesのキャップをかぶって、ベンチに座ってるって、LINEに書いてたから」
微笑を浮かばせながらマコトは言うと、あざとく小首をかしげる。
「いや、待って。待って」
僕は公園のベンチから立ち上がると、目の前に立っている「マコト」と名乗る少女の顔を見据え、言葉を震わせながら訊いた。
「マコトって……、女だったの?」
「あっ、うん。実は……」
誰かが冷蔵庫にキープしていたプリンを食べたようなバツの悪い顔つきで、マコトはたどたどしく言葉を返した。
「あんだけツイートじゃ、『僕は』とか『俺は』とか、って言ってたじゃん。
こっちが下ネタ言っても、バンバン拾って返してくれてたし」
「私、結構下ネタいける方だよ」
微妙にずれた答えをマコトは返すと、斜めがけしていたPORTERのバッグからチケットを取り出し、それを僕に手渡す。
「取り敢えず、これ。タクヤの分。
詳しい事は、後で歩きながら話すよ」
言い終えたマコトは、腕時計で時刻を確認すると、再び僕に視線を戻した。
「じゃ、まずはグッズ売り場にいこうか。
昨日、そういう感じでやり取りしてたもんね」
年齢が一つ上だという事もあり、仕切ってくれるマコト。
そのマコトの様は、普段Twitterで見せている、「いつものしっかりとしたマコト」そのものであった。
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