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「有岡くん、何か楽しそうだね」
僕がスマートフォンを見ながら呆けていると、頭上で声がした。
僕はスマートフォンから視線を外し、振り返る事で声の主を見上げると、そこには僕と同じ大学二年である白石琴音が立っていた。
「何か、いい事でもあったの?
今もちょっと、笑ってるし」
白石は続けて言うと、少し距離を開けて、僕の隣へと座る。
「あっ、そんな大した事じゃないんだけどね」
僕はスマートフォンをカーゴパンツのポケットへと入れると、かいつまんで白石に事情を話した。
「友達にLINEを送ったら、OKって返事が来たから、それでニヤついていただけだよ。
そんな、深い意味は無い」
「男の子? 女の子?」
勘が働いたのか、白石は好奇心を全面に押し出した目でもって訊いてくる。
「あっ、女の子だよ……」
ごまかしきれない、と思った僕は、素直に返答した。
「へぇ、有岡くんやるじゃん」
白石はホイップされたメレンゲのような、柔らかな笑顔を浮かばせた。
「有岡くんって、アタシの中で一人で本とか読んだりとかスマホ触ってるってイメージだから、女の子とそんなやり取りするとかちょっと意外。
やっぱり、男の子なんだね」
「……いや、そういう訳じゃないよ」
僕は白石から視線を外すと、照れ隠しとばかりに苦笑する。
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