●白石さん

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「有岡くん、何か楽しそうだね」 僕がスマートフォンを見ながら呆けていると、頭上で声がした。 僕はスマートフォンから視線を外し、振り返る事で声の主を見上げると、そこには僕と同じ大学二年である白石琴音が立っていた。 「何か、いい事でもあったの? 今もちょっと、笑ってるし」 白石は続けて言うと、少し距離を開けて、僕の隣へと座る。 「あっ、そんな大した事じゃないんだけどね」 僕はスマートフォンをカーゴパンツのポケットへと入れると、かいつまんで白石に事情を話した。 「友達にLINEを送ったら、OKって返事が来たから、それでニヤついていただけだよ。 そんな、深い意味は無い」 「男の子? 女の子?」 勘が働いたのか、白石は好奇心を全面に押し出した目でもって訊いてくる。 「あっ、女の子だよ……」 ごまかしきれない、と思った僕は、素直に返答した。 「へぇ、有岡くんやるじゃん」 白石はホイップされたメレンゲのような、柔らかな笑顔を浮かばせた。 「有岡くんって、アタシの中で一人で本とか読んだりとかスマホ触ってるってイメージだから、女の子とそんなやり取りするとかちょっと意外。 やっぱり、男の子なんだね」 「……いや、そういう訳じゃないよ」 僕は白石から視線を外すと、照れ隠しとばかりに苦笑する。
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