●出逢った頃のように

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「紆余曲折を経て、あの店をオープンしたって感じだったな……」 駅まで徒歩で向かっている間、酔っているというのもあるのか僕はポツリと独り言を吐いた。 今日の話から察するに、どうやらマコトは少女時代に家出や虐待など、軽々しく僕には言えない経験があったようだ。 そして、そういう経験があったからこそ、少女時代のマコトは「援デリ」という場で身体を売る事で日銭を稼ぎ、年齢を重ねてからは「りんちゃん」を始めとする少女らを、逆に「援デリ」で使役させる事で金銭を得ていたのだろう。 言ってみれば、被害者から加害者へとなったマコトだが、今日の口ぶりではやはり罪の意識は抱いていたようであった。 彼女がとある店に弟子入りし、そこで学んだ「しらすかけご飯」は、彼女なりの贖罪であるのかもしれない。 「アレをPRすれば、もっと店も繁盛すると思うんだけどな……」 再び僕は独りごちると、改札をくぐりホームで電車を待つ。 10年ぶりに再会した、マコト。 そのマコトと言葉を交わした結果、僕の心は激しく高鳴ったのは言うまでもないが、マコトに対するこの気持ちが何なのか。 それを僕は、マコトとの再会を契機として、改めて考える事となった。 学生時代、僕の憧れであった白石は先日既婚者となった。 恋人であったキヨミとは既に別れ、かなりの年月が経つ。 そして、マコトに対して抱いているこの感情は、キヨミを始め、かつて僕が付き合ってきた女性に対して決して抱いてこなかった感情でもあった。 ──マコト、誰か付き合ってる男がいるのかな。 ため息を一つ吐きながら僕は思うと、ホームに滑り込んできた電車に乗る。 そして、つり革を手に持ちながら、僕はマコトの事をただ想った。 ──今度、店に行ったら、借りたままになっている「こめ」のCDを持っていくか。 沈思の締めくくりとして、10年近く借りたままとなっていた「こめ」のCDの事を僕は思うと、ターミナル駅で電車を降り、自身が今住んでいる福徳長に向かう路線に乗り換えをした。
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