●愛がもう少し欲しいよ

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「相変わらず、おキレイで」 僕は軽いジョークをキヨミに対して述べると、グラスに入っているビールを一息に飲み干す。 「思ってもないクセに」 そのジョークにキヨミは笑うと、空いた僕のグラスにビールを注いでくれた。 「白石の結婚式から2ヶ月が経つけど、アレからキヨミ。 まだ、彼氏出来ないの?」 僕は礼を述べた後、キヨミに目を向け、訊く。 「いや、それ。 ある意味セクハラだよ、タクヤくん」 鯛の切り身を食べていたキヨミは箸を置くと、肩をすくめた。 「元々、会社でもアタシ。 気難しい人で通ってるしね。 で、何回かケンカしながらも付き合ってきた彼氏から、この年でいきなり放り出されたら、もうどうしようもないよ。 お見合いパーティーにでも行こうかなってアタシ、今、真剣に悩んでるのに」 キヨミはため息をつくと、 「そういう、タクヤくんは?」 と、僕に訊いてきた。 「俺の方も似たようなモンだよ。 昔、白石に言われた事があるけど、元々俺ってそんな社交的な性格じゃないからね。 前の彼女が、今の会社の女の子ってのもあるのか、会社の女の子は仕事中以外はあまり俺に話し掛けてこない」 「お互い、似たような状況って訳か」 キヨミは、ふふ、と笑うと、僕の小鉢を手に取り、そこに鍋を取り分けてくれた。 「あっ、いいよ。自分で入れるのに」 「入れさせてくださいよ、元カノとして」 笑いながらキヨミは言うと、鍋の具材が入った小鉢を僕の前に戻した。 「そういえば、キヨミ。 前に白石から、鍋を取り分けるのにセンスがある、とか言われてたよな。 今日、久しぶりにそれ見たけど、やっぱ食欲そそるような入れ方するな」 「いや、アタシ。 そんな計算せずに、ざっくりと入れてるだけなんだけどな。 白石さんにしてもタクヤくんにしても、誉めすぎだよ」 キヨミは笑うと、手慣れた様子で自分の小鉢にも鍋を取り分けていった。
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