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久しぶりに行われた「根本会」は、大きな盛り上がりを見せた。
が、現在進行形で関係性を築いていく飲み会とは違い、過去の出来事を振り返る事で盛り上がる「根本会」は、その宴が終わると
「次の日には現実に帰らなくてはならない」
という事実を、嫌でも実感させられた。
「まぁ、新メンバーも加わった事だし、このまま第二回第三回と継続して飲み会やっていこうぜ!
もし、当時俺の飲み会に来ていた人間で、今でも連絡がつくって人間がいたら、どんどん参加させていって大規模な会にしていってさ!」
飲み会の終わり間際、信也がこう言い、皆も「そうだな!」と共感するものの、結果から先に述べるとそれは構想のみで終わり、この飲み会が継続的に続く事は無かった。
「タクヤくん、もう帰るの?」
全員でターミナル駅に向かい、そこで各自が自宅の最寄りの駅に繋がる路線に向かっている最中、キヨミがそれとなく僕に訊いてきた。
時刻は、10時を少し過ぎた辺りであった。
2軒目に行こうと思えば、まだ行ける時間である。
「まぁ、何も無ければそのまま帰る感じだけど……」
「じゃあさ、飲み直さない?
アタシ、まだ飲み足りない気分なの。
色々と溜まってるモノも全部吐き出せてないし、ちょっと付き合ってよ」
「俺はいいけど、そっちは大丈夫なのかよ。
確か、門限結構厳しかったハズだろ」
「門限とか、いつの話……」
キヨミは微酔で顔を赤く染めたまま、クスクスと笑った。
「もう実家出て、今は独り暮らししてるよ。
アタシ、家もココからならタクシーで帰れる距離だし、ちょっとだけ飲もうよ。
色々、訊いて欲しい愚痴もたくさんあるんだからさぁ」
「おい、お前ら。帰らねえのか?」
ここで、僕と同じ路線の田渕が振り返り、訊いてくる。
「田渕、悪い。
ちょっと、2軒目行ってくるわ。
キヨミが別れた彼氏の事で、相当愚痴が溜まってんだと」
「そうか。
じゃあ俺は先に帰るわ、早く帰らねえと嫁さんがうるさいからよ。
また飲もうな!」
田渕は大きな身体をくるりと反転させると、改札をくぐり、そのままホームへと消えていった。
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