●愛がもう少し欲しいよ

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この夜、僕はキヨミと久しぶりのセックスをした。 この10年の間に付き合ってきた彼氏達が、キヨミのプレイスタイルを変えてしまったのか。 以前のキヨミは、「お願いします」とばかりにほぼ受け身であったのに対し、この日のキヨミは会わない期間に身につけた手技を、マジシャンのように次々と僕に披露してきた。 自分とのセックスを印象付けさせたいのか、僕に突かれている時もキヨミは過剰に声を上げ、やがて全てが終わるとキヨミは 「アタシ達、もう一回付き合わない……?」 と、息を乱しながら僕に訊いてきた。 「タクヤくん、今、彼女いないんでしょ……」 キヨミは僕の身体を抱きしめると、僕の胸の上に頭を載せながら語っていく。 「昔、アタシがタクヤくんと別れたのって、タクヤくんがアタシよりずっとマコトさんの事を想ってたからなのね。 でも、今はタクヤくん……。 マコトさんは犯罪者だから、関わらないに越した事は無いって言ってたもんね。 タクヤくん、今、アタシと付き合ったら、他の女の子なんか見ずにアタシだけを見てくれるよね? だって、マコトさんはもうタクヤくんの近くにいないんだし」 僕が、松川のマコトの居酒屋に頻繁に出入りしている、という事は、キヨミをはじめ誰にも言っていなかった。 その事もありキヨミの言葉に即答出来なかった僕は、答えの代わりとして自分の胸の上にあるキヨミの髪を優しく撫で続けるのみであった。 「どうする?」 キヨミは僕の上に馬乗りになり、挑むような視線を僕に向けると、返答を促してくる。 「キヨミは、俺の事が好きなの?」 僕はキヨミの目を見つめたまま、問い掛けた。 「好きだよ」 キヨミは微笑を浮かばせながら、答えた。 「最初に見掛けた時から、ずっと。 タクヤくんが白石さんの事を好き、っていうのもアタシ、すぐに分かったしね」 「すっかり、お見通しだったって訳か……」 僕は、苦笑交じりに言葉を返す。 「……まぁ、考えておいてよ。アタシと付き合うかどうかっていうの」 キヨミは言うと、ゆっくりと僕の首に手を回し、キスをしてきた。
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