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パンケーキを食べている時は少し不穏な空気が漂ったものの、その後のカラオケの盛り上がりは最高と言えるモノであった。
元より、ボカロが好きだったのか。
マコトは米倉翔吾の曲とは別に「脳漿炸裂ガール」など新旧織り混ぜたボカロの曲を歌い、僕は僕で対抗するように「04 Limited Sazabys」や「Mrs. GREEN APPLE」など、近年流行りのバンドの曲を歌った。
──俺が歌うカラオケをキッカケに、マコトも邦ロックにハマってくれたらいいんだけどなぁ。
マコトもボカロを歌い続けているトコロから察するに、おそらく僕ら二人はカラオケを通じてお互いの好きなジャンルの布教をしていたのであろう。
6時になるとカラオケボックスを後にし、その代金は僕が支払った。
その前に入ったパンケーキの代金を、マコトが「自分が誘ったから」という理由で支払っていたからだ。
「今日はとっても楽しかった、ありがと」
昼過ぎの豪雨はどうやら突発的な豪雨だったらしく、すっかりと晴れ渡りオレンジ色に染まった空をバックとしながら、マコトが僕に礼を述べてきた。
「俺も楽しかった、今日は来てくれてありがと」
駅舎の入り口に立っていた僕は、マコトに続いて礼を述べる。
「今度は、晩ごはんも一緒に食おうぜ」
そして、マコトとグータッチをしながら、僕は名残惜しく言葉を付け添える。
「うん、その事に関してはゴメンね。
今夜は、どうしても外せない用事があってさ……」
急な誘いが災いしてか、マコトはこの日の夜はどうしても付き合えないとの事であった。
「次、また遊んだら、今度は夏フェスって感じかな?」
スマートフォンで時刻を確認しながら、僕はマコトに訊く。
「多分、そうなるだろね」
マコトは笑顔を浮かばせながら、僕の問い掛けに返答した。
「チケット、絶対当てようぜ」
締めくくりに僕が述べ、マコトがそれに対して「おう」と返すと、僕ら二人は別れた。
その後、改札をくぐり、ホームで電車が来るのを待っている間、僕はマコトが今日もたらしたミステリーについて思考を巡らせていった。
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