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しかし、僕が抱えているその睡魔は、目の前に現れたマコトを見た事で即座に吹き飛んでしまった。
前述したように、これまで散々「下ネタトーク」など「男同士の会話」をTwitter上でしてきたマコト。
そのマコトが、実は「女の子」であったからだ。
「……あの、お金」
すると、呆けた僕を現実に呼び戻すかのように、マコトがおそるおそるといった感じで口を開く。
「えっ?」
「いや、あの……チケット代。
端数は負けておくからさ、チケットさっき渡したから、お金……」
僕は、マコトに促されるがままカーゴパンツの後ろポケットから財布を取り出すと、チケット代である6000円をマコトに対して支払った。
「ありがと。
ってか、ゴメンね。急な話でさ。
タクヤが『行く』って言ってくれて、助かったよ。
ホント、あり得ないドタキャンだったからさ」
マコトはPORTERのバッグから財布を取り出すと、僕から受け取った千円札6枚を財布に入れながら詫びの言葉を述べた。
「いや、それはいいんだけど……」
「じゃあ、グッズ」
マコトはまごついている僕に対して言うと、くるりと踵を返し、グッズ売場のあるライブハウス脇に目をやる。
「あっ、そうだね……」
そのマコトの促しに僕は曖昧に頷くとマコトと二人、まだライブハウスの開場3時間前だというのに、既に行列が出来つつあるグッズ売場に向かって、ゆっくりと歩を進めていった。
「まっ、そういう反応になると思ってたよ。
タクヤ、私の事を完全に男だって思ってたもんね」
「うん、まぁ……」
全くの図星である為、マコトの言葉に僕は愛想笑いを浮かばせる事くらいしか出来ない。
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