●SINGLES

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「俺だって、今回の夏フェスに対しては真剣に臨んでるよ。 だから、こうやって段取りとか決めたんだろ。 それに、昨日も俺、言ったじゃねえかよ。 夏フェスを主催するバンドも、俺的には気になってる存在だって」 「なら、いいけどね」 僕の言葉にマコトは、フフフと微笑した。 「チケット、当たるといいね」 そして、その微笑を交えたまま、マコトは言葉を続ける。 「ホント、それ願ってる」 マコトに釣られ、僕も微笑を送話口に洩らす。 その時であった。 どこか動揺を抱かせる、マコトの激しい息遣いが僕の耳に聞こえてきた。 スマートフォンを右へ左へとやっているのか、途切れた言葉の代わりとして聞こえてくる風切り音。 「ごめん、タクヤ!」 その風切り音の後、マコトは激しい息遣いを覆い隠すような快活な声をスマートフォンに送り込んできた。 「ちょっと、待ち合わせしてる人が来ちゃってさ! もう、電話切るね! ゴメン!」 慌ただしくマコトは続けて述べると、電話はシャッターが落とされたように唐突に切れた。 「……どうしたってんだろ」 マコトの慌てぶりが気になった僕は、思わず独りごちた。 しかし、気になっても今の僕にはどうする事も出来ない。 マコトが僕にもたらしている「ミステリー」は、こんな事以外にも多々存在しているし、判断材料を殆ど持ち合わせていない今の僕には、何一つ想像する事は出来やしないのだ。 「基本ニート、とか言ってるクセに『待ち合わせ』とか、ホント意味分かんねぇ」 電話の切れたスマートフォンの液晶画面を凝視しながら、僕は再度独りごちると、コンビニの袋に入っていた二つ目のおにぎりを取り出す。 そして、スマートフォンで時刻を確認すると、僕は残り少ない休憩時間で食事を終える為、その鮭味のおにぎりをせわしなく頬張った。
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