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「でも、あまり気にしないでよ。
私、性格こんなだしさ。
服とかメイクとかも見ての通り適当だし、もうどっちかと言えば男みたいなモンだよ、私。
だからタクヤは、私の事を変に女だとか意識しなくてもいいんだよ」
「うん、まぁ……」
マコトの言葉に僕は頷くのだが、男だと思っていた人物が実は「女の子」であったという事実は、僕の中に戸惑いを埋め込み続けていた。
「あの、タクヤには一つお願いがあるんだけど……」
ライブハウス脇にある、グッズ売場が近付いてきた頃。
マコトは歩くスピードを緩めると、顔を上げ、右側を歩く僕の顔にゆっくりと視線を向けながら尋ねてきた。
「タクヤ、今日。
Twitterで繋がってる子達と、会う約束とかしてる?」
「いや、してないよ」
ようやく、ハッキリと言える話題が出てきたので、僕もマコトを見つめ返すと、戸惑いがもたらした閉塞によって胸奥で滞っていた言葉をマコトに対してぶつけていく。
「基本、俺、前にもTwitterで言ったかもだけど、リアルとネットは分けたい、って考えだからさ。
今日も含めて、フォロワーとリアルで会うって事は無いよ。
もちろん、マコトとのこれは別だよ?
だって、行く事が出来ないって思っていた、米倉翔吾のライブに行けるんだからさ。
それに、マコトとはTwitterでよくバカ話とかして、ある程度どんな奴かは分かってるから、マコトなら別に会ってもいいかな、って思ったんだ。
もっとも、そのマコトが女だった、ってのは今でも驚いてるんだけど」
「男の方が良かった?」
マコトは計るように上目遣いで僕を見つめ、腹蔵が無いかどうかを確かめてくる。
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