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部屋のプランから察するに、大人一人で泊まる部屋を見つける事が出来なかったマコトは、おそらく
「大人2人 1部屋」
と条件を変えて、検索をかけたのだろう。
そして、唯一ヒットしたのが、くだりの10万の部屋だった訳だ。
しかし、10万は僕の予想を遥かに超えて、高すぎる。
かといって、この部屋をスルーすれば、僕もマコトも思っている通り、ホテルでの宿泊は限りなく不可能となるだろう。
もっとも、宿泊代が厳しいのならマコトは「貸す」と言ってくれてはいるが、仮にそうしたとしてもマコトと一夜を過ごす状況に、僕自身が耐える事が出来るだろうか。
『ちょっと待ってて』
僕はもう一度マコトにLINEを送ると
「大人2人 1部屋」
という条件で、夏フェス当日の掛川の近隣都市のホテルに空きが無いかどうか検索をかけてみた。
が、思った通りというか、磐田・浜松・静岡といった夏フェスが行われる掛川の近隣都市のホテルの空きは、もうドコにも無かった。
僕の今月のバイト代は、10万円である。
そこから、信也と折半している部屋代の3万円。
食費や携帯料金など、諸々の費用を差し引けば、僕が自由になるお金は3万円近くとなる。
これは、ギリギリ新幹線代とチケット代がまかなえる額だが、さすがに全額まるまる使える訳ではない。
それ故、貯金を崩す必要があるのだが、信也の「根本会」に頻繁に参加している、という事情から僕の現在の貯金額は10万円を切っている。
もしこのマコトの指定したホテルに泊まるとなれば、僕は夏フェス現地での食事においても節約を余儀なくされ、その後のプライベートにおいても数ヶ月はストイックな生活を強いられる事となるだろう。
『あのさ、マコト』
僕はいつものカーゴパンツを穿くと、様子をうかがうようにマコトに対してLINEを送った。
『ホテルを見つけてくれたのは有り難いんだけど、さすがに俺もそんな貯金がある訳じゃない。
だから、そのホテルに泊まるとなると、申し訳ないけどマコトからお金を借りることになる。
ホントにいいの?』
『私はかまわないよ、全然』
マコトは僕のメッセージに既読をつけると、すぐさま返信をしてくる。
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