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『だって、私。
最初から、お金が足りないんなら貸してあげる、って言ってたじゃない。
じゃなきゃ、こんなクソ高いホテルとか見つけても、予約とかしないよ。
前にも言ったけど、お金返すのはタクヤが社会人になってからでもいいからさ。
で、私はいくら出せばいいの?』
『とりあえず、ホテル代だけ借りといていい?
悪いけど』
僕がLINEを送ると、マコトから以前にも見た、陽気な犬が「了解!」というプラカードを持っているLINEスタンプが、返事としてすぐに返ってきた。
『マコト、悪いけどお金返すの当分先になるかもしれないよ。
そんで、分割で返すことになるかもしれない。
でも、絶対に返すからそれだけは信用して!』
申し訳なさと情けなさから、僕はせめて返済の確約だけを強調したメッセージをマコトに対して送る。
『いいよ、別に。
何回も言ってるけど、私、お金ならそれなりにあるから☆』
しかし、マコトは気にしてない、といった様子のメッセージを返信し、その後
『ありがとう』
『フェス、楽しもうね♪』
とメッセージを交わすと、そこで僕達のやり取りは終わった。
「……さてと」
スマートフォンをカーゴパンツのポケットに入れると、僕は足早にキッチンへと行き、冷凍していた食パンをオーブントースターへ入れる。
そして、焼き上がったトーストにマーガリンを塗ると、僕はそれを冷蔵庫に入れていたコーヒー牛乳で流し込み、せわしなく咀嚼していった。
今日の講義は、二限からだ。
マコトとのやり取りが少し長引いた為、急いで食べないと講義に間に合わない可能性がある。
トーストを食べ終え、使ったソーサーとコップを僕がシンクで洗っていたその時であった。
「有岡、お前さっきやり取りしていたのって、もしかして噂のマコトちゃんか?」
僕の独り言で目を覚ましてしまったのか、広田が口元を曲げながらキッチンへと入ってきた。
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