●罪とビーナス

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『だって、私。 最初から、お金が足りないんなら貸してあげる、って言ってたじゃない。 じゃなきゃ、こんなクソ高いホテルとか見つけても、予約とかしないよ。 前にも言ったけど、お金返すのはタクヤが社会人になってからでもいいからさ。 で、私はいくら出せばいいの?』 『とりあえず、ホテル代だけ借りといていい? 悪いけど』 僕がLINEを送ると、マコトから以前にも見た、陽気な犬が「了解!」というプラカードを持っているLINEスタンプが、返事としてすぐに返ってきた。 『マコト、悪いけどお金返すの当分先になるかもしれないよ。 そんで、分割で返すことになるかもしれない。 でも、絶対に返すからそれだけは信用して!』 申し訳なさと情けなさから、僕はせめて返済の確約だけを強調したメッセージをマコトに対して送る。 『いいよ、別に。 何回も言ってるけど、私、お金ならそれなりにあるから☆』 しかし、マコトは気にしてない、といった様子のメッセージを返信し、その後 『ありがとう』 『フェス、楽しもうね♪』 とメッセージを交わすと、そこで僕達のやり取りは終わった。 「……さてと」 スマートフォンをカーゴパンツのポケットに入れると、僕は足早にキッチンへと行き、冷凍していた食パンをオーブントースターへ入れる。 そして、焼き上がったトーストにマーガリンを塗ると、僕はそれを冷蔵庫に入れていたコーヒー牛乳で流し込み、せわしなく咀嚼していった。 今日の講義は、二限からだ。 マコトとのやり取りが少し長引いた為、急いで食べないと講義に間に合わない可能性がある。 トーストを食べ終え、使ったソーサーとコップを僕がシンクで洗っていたその時であった。 「有岡、お前さっきやり取りしていたのって、もしかして噂のマコトちゃんか?」 僕の独り言で目を覚ましてしまったのか、広田が口元を曲げながらキッチンへと入ってきた。
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