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「そうだけど」
僕は水道の栓を止めると、広田に目を向け、素っ気なく答えた。
「何か、えらく驚いた様子で10万がどうとか、ブツブツ呟いてたじゃねえーかよ。
マコトちゃんから、友達やめたい、って言われて、10万請求されたのか?」
「違うよ」
僕は先程の口調を保ったまま言うと、夏フェスに行く話とそこでのホテル代が10万円かかる、という話を広田に対して説明した。
「10万とか、また高いホテルに泊まるんだな。
そんで、同じ部屋に泊まるとか、お前らやっぱ付き合ってんじゃねえのか?」
「いや、それは無い」
キッチンにかけてあるタオルで手を拭きながら、僕は広田の質問に答える。
「マコトも、俺と付き合う事に関してはどこか壁があるしよ。
この間も合コンの事を切り出したついでに、彼氏がいるかどうか尋ねたら、
『もしかして私と付き合いたいの?』
って、キレ気味で言われたくらいだし」
「でも、お前ら。
静岡に、二人で一泊してくるんだろ?」
「まぁ、そうだけど……」
「ならよ、有岡。
お前マコトちゃん押し倒して、一発ヤってこいよ。
マコトちゃんも、もしかしたらそれを望んでるかもしんねえぞ」
「いや、待てや広田。
そんな事、出来る訳ねえだろが」
無神経な広田の発言に、さすがに僕は声を荒げた。
「けど、そのダブルベッドのホテルの部屋を探しだしたのは、マコトちゃんだろ。
で、お前の返事も聞かず、真っ先に部屋を予約したり、金まで貸すから一緒に行こうとか、マコトちゃんは言ってきてると」
「……まぁ、そうだけどよ」
眉を寄せながら僕は言葉を返すと、リビングに行き、フローリングに置きっぱなしにしていたショルダーバッグを肩にかける。
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