●罪とビーナス

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「ならよ、有岡。 マコトちゃんはもう、お前に抱かれる気マンマンかもしんねえぞ」 キッチンから僕を追いかけてきた広田は、下卑た笑みを浮かばせながら僕に言ってきた。 「だからよ、有岡。 お前はそのマコトちゃんの期待に応えて、一緒のベッドに入った時点で襲っちまえばいいんだよ。 大体、女の側からダブルベッドの部屋を予約する時点でおかしすぎるだろがよ。 これはもう、マコトちゃんからのサインなんだよ。 お前にヤって欲しい、っていうよ」 「悪ぃ、そろそろ大学行くわ」 広田の言葉を断ち切る形で僕は言うと玄関に向かい、VANSのスニーカーに足を入れる。 「お前も、男だろ。 友達とか、下らねえこだわり見せてねえで、素直にマコトちゃんとヤレばいいんだよ」 玄関先で、僕の背中に向かって言う広田。 しかし、僕は広田の言葉を無視する形で玄関のドアを閉めると、その言葉から逃げるようにマンションの階段を駆け降り、駐輪場の自転車に鍵を射し込んだ。 「……そんな事、出来る訳ねえだろが」 駐輪場から飛び出した僕は、怒りをペダルにぶつけながら大学までの道程を自転車で漕いでいく。 そして、信号待ちで自転車を止めたその時であった。 広田の言葉に、僕の身体は完全に惑わされてしまったのか。 不覚にも、僕のペニスは勃起していたのだ。 「下らねえ事、言いやがって。広田のヤロー」 僕は舌打ちをすると、幾度も深呼吸をする事で勃起を静める事につとめた。 信号が、青になる。 僕は先程の深呼吸を続けたまま、自転車のペダルを漕いでいく。 しかし、脳裏に貼り付いたマコトのなまめかしいイメージは、なかなか拭い去る事が出来ず、結局僕は勃起を抱えたまま大学の正門をくぐる始末であった。
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