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「うーん、どうだろねぇ……」
マコトの直球とも言える問い掛けに、僕は腕組みをしながら立ち止まり、その場で考えあぐねてしまった。
「正直、今日は男友達が出来るのを期待して来た、っていうのがあったからね。
ひょっとしたら、どこかにそんな気持ちがあったかもしれない。
だって、来るのは男だと思い込んでて、目の前に現れたのは女な訳でしょ。
だから、さっきも言ったけど驚いたのは事実だよ。
あっ、女なんだって。
けど、今は別にそれでいいかな、なんて思ったりしてる。
実際、男であろうが女であろうが、マコトとのやり取りが面白いのは事実なんだし」
「タクヤなら、そう言ってくれると思った」
僕の言葉を聞き終えたマコトは八重歯を見せ、どこか安堵したような笑顔を浮かばせた。
「タクヤ、Twitterでそういう風に言ってたの、見た事あるもん。
自分は、リアルとネットは分けたい主義だ、っての。
実は今日、タクヤを誘ったのってそれが大きな理由なんだ。
タクヤなら、他の子達みたいにフォロワーと会う約束とかしてないだろうし、私が実は女だっていうのも黙ってくれるかなぁ、って」
「何?
さっきマコトが言おうとしていたお願いって、もしかして自分が女だっていうのを黙ってて欲しい、って事だったの」
「うん、そう……」
僕の言葉にマコトは小さく頷くと、先程浮かばせた笑顔を奥に引っ込め、神妙な面持ちで言葉を続けていく。
「出来れば、タクヤには黙ってて欲しい。
私が女だって事。
っていうか、私が女だってバレたら、変な男がTwitterで絡んできそうじゃん。
あの……、ヤリモクっていうか、下心全開で絡んでくる奴。
もちろん、私、そんな美人って訳じゃないよ。
親とかも、妹を見習ってお前も女らしくしろ、とか呪文のように何百回も言ってきたりしてたしさ。
でもね、Twitterとかネット上で『女』って事をアピールしてると、ロクな事がないんだよね。
私の経験上の話だけど。
さすがに、それについて詳しく語る気はないけど、とにかくそういう理由があるから、私。
あのアカウントでは、自分が女ってのを隠してるんだ」
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