【第一部】 ──青年──

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「うーん、どうだろねぇ……」 マコトの直球とも言える問い掛けに、僕は腕組みをしながら立ち止まり、その場で考えあぐねてしまった。 「正直、今日は男友達が出来るのを期待して来た、っていうのがあったからね。 ひょっとしたら、どこかにそんな気持ちがあったかもしれない。 だって、来るのは男だと思い込んでて、目の前に現れたのは女な訳でしょ。 だから、さっきも言ったけど驚いたのは事実だよ。 あっ、女なんだって。 けど、今は別にそれでいいかな、なんて思ったりしてる。 実際、男であろうが女であろうが、マコトとのやり取りが面白いのは事実なんだし」 「タクヤなら、そう言ってくれると思った」 僕の言葉を聞き終えたマコトは八重歯を見せ、どこか安堵したような笑顔を浮かばせた。 「タクヤ、Twitterでそういう風に言ってたの、見た事あるもん。 自分は、リアルとネットは分けたい主義だ、っての。 実は今日、タクヤを誘ったのってそれが大きな理由なんだ。 タクヤなら、他の子達みたいにフォロワーと会う約束とかしてないだろうし、私が実は女だっていうのも黙ってくれるかなぁ、って」 「何? さっきマコトが言おうとしていたお願いって、もしかして自分が女だっていうのを黙ってて欲しい、って事だったの」 「うん、そう……」 僕の言葉にマコトは小さく頷くと、先程浮かばせた笑顔を奥に引っ込め、神妙な面持ちで言葉を続けていく。 「出来れば、タクヤには黙ってて欲しい。 私が女だって事。 っていうか、私が女だってバレたら、変な男がTwitterで絡んできそうじゃん。 あの……、っていうか、下心全開で絡んでくる奴。 もちろん、私、そんな美人って訳じゃないよ。 親とかも、妹を見習ってお前も女らしくしろ、とか呪文のように何百回も言ってきたりしてたしさ。 でもね、Twitterとかネット上で『女』って事をアピールしてると、ロクな事がないんだよね。 私の経験上の話だけど。 さすがに、それについて詳しく語る気はないけど、とにかくそういう理由があるから、私。 あのアカウントでは、自分が女ってのを隠してるんだ」
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