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「わざわざ、前日祭に『米倉×菅』ってユニットで出る、って事はその一曲だけで終わる訳ないじゃん。
もしかしたら、未発表曲があってそれを歌う可能性もあるんだよ。
だから、張り切って前日祭のチケットも取ったんだから」
「あっ……、それは確かに可能性としては無くもないな」
マコトの推理に僕は素直に首肯すると、何かしら情報が無いか早速スマートフォンで米倉翔吾関連の情報を見てみた。
しかし、箝口令でも敷かれているのか、米倉翔吾のホームページやTwitterアカウントなどにおいて、「米倉×菅」が新曲を歌う、という情報はどこにも見当たらなかった。
「まっ、期待させといて米倉さん名義で出してる曲を、菅さんと二人で歌う可能性も無くはないんだけどね。
あっ、これ米倉さんの曲じゃん、って。
まぁ、それはそれでレアだけど、やっぱ全くの新曲を聴けたら嬉しいよね。
せっかく、静岡まで足を運ぶんだからさ」
「そう言われたら、俺もちょっと期待しちゃうな」
「完全な新曲歌ってくれたら、私。
多分、現地で発狂してるかもしれない。
ねぇ、ゲストで出るって事は一曲じゃなく、三曲以上は確実に歌うよね。
もし、そうじゃなく『原色の空』一曲だけで米倉さんと菅さんがステージ去ったら、私。
違う意味で、発狂してそうだけど」
「目立つから、そういうのは俺がいないトコロでやってくれよな」
苦笑を交じえながら僕がマコトに言った、その時であった。
マコトの膝の上に置かれていたスマートフォンが、身震いと着信音でもって、持ち主にLINEの通知を告げた。
米倉翔吾の話を続けている、というのもあり、マコトは笑顔のままスマートフォンを手に取ると、LINEを通じて送られてきたメッセージを確認する。
スマートフォンを見たマコトはその表情は、瞬時にして曇った。
そして、「……あり得ない」と舌打ち交じりに言うと、マコトは露骨に苛立ちを露とさせる。
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