●Season Train

4/5
616人が本棚に入れています
本棚に追加
/416ページ
「わざわざ、前日祭に『米倉×菅』ってユニットで出る、って事はその一曲だけで終わる訳ないじゃん。 もしかしたら、未発表曲があってそれを歌う可能性もあるんだよ。 だから、張り切って前日祭のチケットも取ったんだから」 「あっ……、それは確かに可能性としては無くもないな」 マコトの推理に僕は素直に首肯すると、何かしら情報が無いか早速スマートフォンで米倉翔吾関連の情報を見てみた。 しかし、箝口令でも敷かれているのか、米倉翔吾のホームページやTwitterアカウントなどにおいて、「米倉×菅」が新曲を歌う、という情報はどこにも見当たらなかった。 「まっ、期待させといて米倉さん名義で出してる曲を、菅さんと二人で歌う可能性も無くはないんだけどね。 あっ、これ米倉さんの曲じゃん、って。 まぁ、それはそれでレアだけど、やっぱ全くの新曲を聴けたら嬉しいよね。 せっかく、静岡まで足を運ぶんだからさ」 「そう言われたら、俺もちょっと期待しちゃうな」 「完全な新曲歌ってくれたら、私。 多分、現地で発狂してるかもしれない。 ねぇ、ゲストで出るって事は一曲じゃなく、三曲以上は確実に歌うよね。 もし、そうじゃなく『原色の空』一曲だけで米倉さんと菅さんがステージ去ったら、私。 違う意味で、発狂してそうだけど」 「目立つから、そういうのは俺がいないトコロでやってくれよな」 苦笑を交じえながら僕がマコトに言った、その時であった。 マコトの膝の上に置かれていたスマートフォンが、身震いと着信音でもって、持ち主にLINEの通知を告げた。 米倉翔吾の話を続けている、というのもあり、マコトは笑顔のままスマートフォンを手に取ると、LINEを通じて送られてきたメッセージを確認する。 スマートフォンを見たマコトはその表情は、瞬時にして曇った。 そして、「……あり得ない」と舌打ち交じりに言うと、マコトは露骨に苛立ちを(あらわ)とさせる。
/416ページ

最初のコメントを投稿しよう!