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「だから、俺とか他のフォロワーとTwitterでやり取りする時、マコトは男ってのを装う為に『僕』とか『俺』とか言ってた訳?」
取り敢えずネット上で「女」をアピールする事はしない、というマコトの主張は理解出来たので、僕はその辺りを掘り下げて訊く。
「うん、そういう事」
その僕の言葉に、マコトはゆっくりと首肯した。
「まぁ、マコトがどんな事情で女ってのを隠したいのか、俺には分からないけどさ……」
僕は腕組みを解くと、再びグッズ売場に歩を向けながら続きを語っていく。
「けど、マコトがそれを望んでんのなら、俺は黙っておくよ。
マコトが女だって事。
で、これからもTwitter上ではマコトとは男だと思ってやり取りしていく。
それでいいかな?」
「うん、そうしてくれたら有り難い」
マコトは再び首肯すると、僕と同じくグッズ売場に向かって歩を進めていった。
ライブハウス脇にある、グッズ売場の入口が見えてきた。
その入口を僕ら二人は、不測の事態が起こらないよう監視しているスタッフの視線を受けながら通っていく。
「マコトはグッズ、何買うんだっけ?」
販売スペースであるカウンターの上部に設けられたグッズ一覧の看板を見ながら、僕はマコトに尋ねる。
「うーん、とりあえずタオルは買おうと思ってる。
Tシャツは、今回デザインが微妙だからちょっと悩んでるけど、どうしようかな……。
あとは、ストラップとパンフを買うと思うけど、タクヤは?」
「俺、多分ストラップだけだよ……」
マコトの問い掛けに、僕は苦笑交じりに返答した。
「っていうか、今日のライブ自体、行けるとか思ってもいなかったからね。
だから、持ち合わせがそんな無いんだよ。
バイト代も入ってくるの、まだ先だし。
だから、今日はライブに行けるってだけで良しとするよ」
「……グッズ、何かおごってあげようか?」
マコトは振り返る事で、目の前のグッズ一覧から僕に視線を移すと、様子をうかがうように尋ねてくる。
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