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「いや、凄いっていうより、知る人ぞ知るバンド、って感じらしいよ」
僕はパンフレットを閉じ、代わりにスマートフォンを取り出すと、「曇りめがね」という名のアカウント主が書いている邦楽専門のブログにアクセスし、そのページをマコトに見せた。
「ほら、ここにRasp berryの事が書かれているんだけど、この人。
Rasp berryについて、凄い詳しく書いてるんだよ。
『Rasp berryは、1989年に結成されたバンド。
1994年にメジャーデビュー、1999年に解散した。
作詞は安久延博が、作曲は三木谷拓次が主に担当していた。
Rasp berryの楽曲の魅力は、爽やかさと切なさを併せ持ったポップなラブソングである。
それは、三木谷拓次が紡いだメロディーの功績が大きいと思う。
安久延博による、「青春」をイメージさせるようなボーカルや詞の世界観も大きな魅力である』
ってよ。
ギターの三木谷さんが亡くなってからはバンドは活動休止状態だったらしいけど、最近また活動し始めたらしいよ」
「どんな曲、歌ってる人達なんだろね」
マコトは言うと、ビーフステーキの横に添えられていたポテトをつまむ。
「検索したけど、タイトルだけじゃ分からないな……」
僕はスマートフォンを凝視しながら、首をかしげた。
「多分、俺らの親世代とかなら分かるんじゃないかな。
活動してたのが結構昔だから、曲を聴いても俺らは分かんないと思う」
「でも、その『曇りめがね』って人によると、Rasp berryってバンドは凄いポップな感じの曲を歌うバンドなんでしょ?」
「まぁ、そう書いてあるな……」
スマートフォンの画面を「曇りめがね」のブログに戻すと、僕はマコトに言葉を返す。
「じゃあ、私達も曲を聴いたら気に入るかもだね」
残った最後の一切れのビーフステーキを口に入れると、マコトは柔らかに微笑した。
「じゃあ、これ食ってRasp berryの時間になったら、ライブエリアに行くか」
僕は言うと、パンフレットを折り畳み、酷暑によりすっかりとぬるくなった「ぶっかけうどん」を食べながら、まだ見ぬRasp berryというバンドに期待を寄せた。
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