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「思った以上に広い部屋だね」
ドアを開け、照明をつけると、マコトはぐるりと部屋を見渡し、その感想を述べた。
「……だよな」
僕もマコトに同意すると、スクリーンのように大きく広がっている窓に向かって真っ直ぐに歩を進めていく。
「つーか、こんな夜景が見える部屋に泊まるとか、今でも信じられねぇ」
カーテンを開いた先に見えている、夜空を鏡写ししたような浜松の夜景に、僕は改めて感動を覚えた。
「私が見つけたんだよ、この部屋。
感謝しなさい」
マコトはダブルベッドに座り、肩に掛けていたリュックサックとPORTERのバッグを床に降ろしながら僕に言う。
「ありがとうございます、マコト様」
僕は振り返り、マコトに礼を述べると、マコトに続く形でリュックサックを降ろし、窓の前に設置されていた一人掛けのソファーへと座った。
「ダブルベッドってのが、難点だよね。
ツインならまだ良かったけど、付き合ってもないのにダブルベッドで二人で寝るのは、やっぱちょっと抵抗があるっていうか」
「……だよな」
何かしら間違いを起こさない為に、僕はいざとなればベッドではなくソファーで寝ようと思っていたのだが、この一人掛けのソファーによって僕のそのシミュレーションは脆くも頓挫した。
「まっ、LINEでも言ってたように、寝る時はお互いベッドの端と端を使って寝ようよ」
マコトは、ベッドをポンポンと叩きながら僕に言う。
「それなら、ギリギリお互いの身体が触れない感じで寝れるしさ。
もう、タクヤが変に寝返り打って、おっぱいに手が当たるくらいは我慢するよ。
こっちも、それ覚悟してダブルベッドの部屋を予約したんだから」
僕は微笑するだけで、マコトの際どい言葉に返答する事が出来なかった。
「だからと言って、わざと寝返り打っておっぱい触ってきたら、私も大声出すからね。
きゃー、助けてー。
この人チカンですー、って」
「触る程のおっぱいがマコトには無いから、大丈夫だろ」
僕はいつものフランクなジョークを、ようやくマコトに対して返す事が出来た。
その僕のジョークに対して、マコトは「ぶっ飛ばすぞ」と返すと、ダブルベッドから立ち上がり、ユニットバスへと向かった。
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