●タクヤ、お酒買ってきてよ

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「この部屋のお風呂、トイレと一緒なんだ……」 ユニットバスのドアを閉めたマコトは、かぶりを振りながら部屋に帰ってきた。 「それが、どうかしたのか?」 「いや、私。 今、猛烈にお腹が痛いんだよね。 多分、今、大きいのをしたら、ちょっとした子供くらいのヤツが出てくると思う。 だって、下っ腹が妊娠してんのかってくらい、とんでもない事になってんだもん」 「食いすぎなんだよ。 だから言ったじゃねえかよ、新幹線でも昼でもあんな食ったのに、夜も会場でバクバク食うんだからよ」 ストレートなマコトの告白に、僕はただ笑った。 「だって、行く店行く店、料理が美味しいんだもん。 そんで、量も少ないからつい追加で買っちゃうっていうか」 「将来、マコト。絶対太ると思う。 今は若いから、食いすぎてもその体型維持出来てるけどよ」 「あー、もう。 喋ってるとお腹限界になってきたから、ちょっとトイレ行ってくるね。 あっ、という訳だから、私が出てきても20分くらいココのお風呂入らないでね。 多分、トイレ終わった後、私の産んだ“子供”がとんでもなく暴れていると思うから」 「心配しなくても、当分の間風呂には入らねえよ」 あまりにも明け透けなマコトの振る舞いに、僕は彼女に対して抱いていた欲情をすっかりと失ってしまった。 「ゴメン、じゃあちょっと行ってくる」 しかめ面で、足をバタつかせながらマコトは言うと、駆け込むようにユニットバスへと入っていった。 同時に、「音姫」代わりの水を流す音が、即座に僕の耳に聞こえてくる。 「……広田。 噂のマコトちゃんは、女子力のカケラもねえぞ」 苦笑しながら僕は独りごちると、床に置いていたリュックサックから文庫本を取り出し、それを読む事で一人になった時間を潰していた。
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