●つよがり

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●つよがり

夜空を眺め、汗を流す事で、心の奥底に溜まりきっていた淀みも洗い流す事が出来たのか。 風呂から出てきたマコトは、身も心もさっぱりした、といった表情をしていた。 「露天風呂、っていうか展望浴場っていうの。 何かアレ、凄いね。 天井が全面ガラス張りで、何か宇宙でお風呂に入ってる気分になったよ」 マコトは顔を上気させながら、言葉を弾ませる。 「そいつは良かった」 すっかりと機嫌が戻ったマコトの様を見て、僕はひとまず安堵した。 「今度は温泉とか行ってみたいよね。 私、お風呂入る前にも言ったけど、温泉とかも家族で行った事ないしさ。 タクヤとだったら、温泉に二人で旅行とか、何か行けそうな気がする」 「行けたら行きたいよな、温泉」 残り少ない貯金額という現状から、僕は確約する言葉を吐けず、場に沿った言葉を返すのみであった。 「つーか、タクヤ。 今さらだけど、凄く焼けてない? 何か、コーヒーかかった人みたいになってるよ」 眉を寄せながらマコトは言うと、やって来たエレベーターへと乗り込んだ。 「前から思ってたけど、マコトのたとえって何か斬新だよな。 コーヒーかかった人、とか、その前はハンバーグみたいに焼けるとかよ」 前衛的なマコトの形容に僕は口元を緩めると、マコトと同じくエレベーターに乗り込む。 「そうかな? 私、あんま考えないで言ってるだけなんだけどな」 マコトは客室のある43階のボタンを押すと、僕の言葉に小首を傾げた。
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