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●マルシェ
しばらくの間、僕との連絡が途絶えていたマコト。
そのマコトから再び連絡が来たのは、夏休み真っ只中である8月の半ばの事であった。
『タクヤ、久しぶり』
マコトの送ってきたLINEの送信時間は「15:03」と、バイトの真っ最中の時間であった。
バイトを終え、スマートフォンの通知でそのマコトのLINEに気が付いた僕は、バイト先の運送会社の倉庫を後にすると、すぐさまマコトのメッセージに対して返信をした。
『おう、久しぶり』
どうやら、今現在スマートフォンを手にしているらしく、マコトからはすぐに返信がきた。
『良かった。もしかしたら忘れられてるかな、って思ってたよ(笑)』
『忘れるわけねーだろ(笑)』
僕は、ひとまず胸を撫で下ろした。
もしかしてマコトは、LINEを既読スルーさせる事によって、このまま僕との関係をフェードアウトさせていくのでは、と思っていたからだ。
『つーか、心配してたんだぜ、マジで。
何回LINE送ってもスルーだし、Twitterにも殆ど顔を出さなくなったし、俺的にどうしたのかなって思ったしよ。
ホテル代とか、CDも返さなきゃいけないし、何で無視すんだよ(笑)』
『めんごめんごー』
おそらく意図的なのだろうか、死語を用いる事でマコトはやり取りを和やかなモノとさせる。
『ちょっと、色々あったんだよ。
まー、それについてはあんま言えないんだけどさ。
でも、心配かけたって事に関してはゴメンって感じ?
そだねー、CDも貸したままになってたよね』
『まぁ、無事で良かったよ、ホント(笑)』
僕は自転車を路肩に止めると、マコトとのやり取りに専念する。
『ところで、ホテル代どうしよう?
俺、マコトに借りっぱなしになってるし、前にも言ったように銀行の口座番号を教えてくれたら、そこに振り込んでいくけど』
先程まで返信がすぐに来ていたのにも関わらず、話がホテル代に及ぶと、マコトからの返信は何故か滞った。
何かしら、メッセージを返信出来ない状態になったのか、と思った僕は、自転車を路肩に止めたまま、既読状態になった自分のメッセージを見つめながら、マコトからの返信をただ待つ。
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