●ドキドキ

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●ドキドキ

「ここ、空いてる?」 次の日、大学の食堂で僕が一人で食事をしていると、トレイを両手で持った白石琴音が僕に話しかけてきた。 「……多分」 「よし」 白石は頷くと、トレイを置き、僕の前へと座る。 「信也のいない時に、こうやって俺に話しかけてるトコがバレたら、また信也から色々と面倒くさい事言われんぞ」 「根本くんのアレは冗談でしょ。 多分、本心では有岡くんの事を信じてるよ」 白石は笑うと、蒸し鶏のサラダに胡麻ドレッシングをかけていった。 「ところで、何か用?」 二人きりで白石と食事など、これまでにおいて一回も無かった為、僕は白石に尋ねる。 「うーん、別に用があるって訳じゃないんだけど……」 白石はごまかすように髪をかき上げると、とっさに思い付いたかのような理由を早口で述べていった。 「今日は根本くんもバイトで休みだし、いつも一緒にご飯を食べてるキヨミとかも珍しくいないの。 だから、アタシと同じように一人でご飯を食べてた有岡くんの前に座ったって訳。 もしかして、迷惑だった?」 「まさか」 白石の本心は図りかねるが、この僥倖を嬉しく思った僕は、目の前に白石が来てくれた事を心より歓迎した。 「俺的には、白石がここで食って話し相手になってくれるのは大歓迎だよ。 もっとも、俺以外のヤローはそれを歓迎しないかもだけどよ」 肩こりをほぐすように首を回し、僕はそれとなく辺りを見回すと、 「白石と二人きり」 というこのシチュエーションは、やはり歓迎されていないのか。 僕と同じく「ぼっち」と呼ばれる女っ気の無い何人かの男子学生は、同等の立場である僕に対して、怨恨でも込めたような視線を向けていた。
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