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●恋心
──迎えた、11月の月末の日曜日。
僕はターミナル駅の噴水の前で、待ち合わせをしている三浦キヨミが来るのをスマートフォンを触りながら待っていた。
以前、この場所はマコトと合コンの待ち合わせをするのに使った場所であった。
が、今、僕はその場所で新たな待ち人である三浦キヨミを待ち、マコトはこの場所を起点として始まった合コンをキッカケに広田と付き合い始めた。
全く、人生というのはたとえ僅かな判断であっても、それがどう作用するか分からない。
「あっ、ゴメンナサイ。もしかして待ちました?」
待ち合わせ時間の5分前、現れた三浦キヨミは僕の姿を確認するなり、眉尻を下げながら言った。
「まさか。俺も今、来たトコロだよ。
つーか、まだ約束した時間じゃないし、そんな謝らなくてもいいんだよ」
三浦キヨミの腰の低さに、僕は思わず微笑する。
思えばマコトとは三回待ち合わせをして、その三回全てに遅刻をされたが、三浦キヨミのそれはマコトとは対照的な為、僕は好印象を抱く。
「あの、何か一人で笑ってますけど、アタシそんな面白い事しました?」
僕の様子があまりにもおかしかったのか、三浦キヨミが怪訝な表情を浮かばせながら訊く。
「あっ、大丈夫。
ちょっと、一人でツボに入ってただけだから。
別に、三浦さんがおかしな事をした訳じゃないよ」
とりなすように僕は返すと、三浦キヨミを伴い、駅の改札を通り抜けていった。
「米倉翔吾のライブ、前から興味あったんですよね」
ホームへと向かう道すがら、三浦キヨミは目を輝かせながら僕に向かって語っていった。
「CMで『明日へのtrain』を聴いた時、これ歌ってるの誰なんだろ、って思って検索かけたら米倉翔吾って分かって……。
で、そこから何曲か米倉翔吾の曲聴いたら、凄くいい曲ばかりで、ライブ行けそうだったら友達と行こうかな、って思っていたんです。
あの有岡さん、ライブでの米倉翔吾ってどんな感じなんですか?」
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