614人が本棚に入れています
本棚に追加
/416ページ
●クリスマスキャロルが流れる頃に
朝まで皆とカラオケを歌い上げ、家で信也と二人、昼過ぎまで眠った後、起き上がった僕は早速マコトに折り返しの電話を掛けた。
しかし、電話は繋がる事は無かった。
そして、マコトから再度電話が掛かってくる事もなかった。
その事から、火急の用件ではなく「いつものマコトの気まぐれ」と判断した僕は、夜にマコトに
『電話、なんだったんだよ?』
とLINEを送り、ついでに彼女が出来た事も報告した。
しかし、マコトはLINEを未読のまま放置し、返信をしてくる事はなかった。
──お互い、彼氏彼女が出来て別々の道を歩みだした、って事かな。
未読のままのLINEを見つめながら、僕はしみじみと思った。
マコトからのレスポンスが無い、詳しい理由は分からない。
しかし、以前電話において「広田くんと付き合っているから」と述べていた辺りから、マコトは新しく彼女の出来た僕に気を使っているのでは、と思った。
「つーか、簡単なやり取りなら友達なんだから、別に返してきてもいいだろが……」
僕は首をかしげると、ゴロリとベッドの上で寝返りを打つ。
このまま、お互いが「彼氏彼女がいる」という理由で配慮し、その結果マコトとの友人関係がフェードアウトしていくのではと思うと、僕は物悲しい気持ちになった。
僕とマコトの友情は、どちらかに恋人が出来た、という理由だけで消え去ってしまう程、儚いモノだったのだろうか。
確かに、リアルにおいてマコトと会話を交わしたのは今年に入ってからだ。
しかし、まるで自分の分身と語っていると錯覚してしまうようなマコトとの心の通ったやり取りは、信也を含め古くからの僕の友達からでは決して得られないモノであった。
──まぁ、マコトが広田と別れるなり、謎の仕事に関する慌ただしさが落ち着けば、また連絡をくれるだろう。
この時の僕は、こう楽観的に物事を考えていた。
しかし、マコトを取り巻く環境はこの数日後、劇的な変化を見せ、僕や広田といった周囲の人間を巻き込んでいく事となるのである。
最初のコメントを投稿しよう!