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●お兄さん真面目そうだし、言わない方が良かったかな
国道沿いにあるそのラーメン屋は、僕の住んでいるマンションから歩いて数分といった場所にあった。
街のタウン誌で度々取り上げられているそのラーメン屋は、僕の住んでいる市を中心に数軒出店する事で地域に根付いた活動をしており、その味も街の住民の殆どが「うまい」と口にする評判のラーメン屋であった。
「ラーメン、ゴチぃ!」
快く話をしてもらう為、りんの分の食券も僕は購入すると、りんを引き連れカウンターではなくテーブル席へと座る。
「じゃあ、早速話してくれよ」
コップに、自分の分とりんの分の冷水を注ぐと、僕は目の前にいるりんを真っ直ぐに見据えた。
「マコトが、どう大変になってるのかを教えて欲しいんだよ。
正直、マコトについては俺にしても広田にしても心配していたからよ」
「広田って人、そんな心配してる素振りなかったけどなぁ……」
グラスに注がれた冷水を一口飲むと、りんは失笑を洩らした。
「あっ、実は言うとタクヤくんの事、広田って人に訊いたのね。
ってか、マコっちゃん、
『りんちゃん、タクヤに今の私の事伝えて!』とか、LINEで言ってきたクセに、肝心のタクヤくんの写真とか無いっていうし、住んでる場所も留ヶ丘しか知らないって言うから、こっちも大変だったんだよ」
「広田に聞いて、俺の住んでるマンションが分かった、って訳か……」
納得した僕は、ゆっくりと頷く。
「うん、そう。
それに広田って人なら、アタシも合コンの時にLINE聞かれて繋がってたしね。
それで、タクヤくんの事を色々聞いた訳。
でも広田って人、何か勘違いしちゃったのかな。
あの人、マコっちゃんと付き合ってるクセに『実は俺に気があったの?』とか、訳分かんないLINE飛ばしてきたから、こっちとしては結構面倒くさかったよ」
「あっ、広田はそういうトコロがあるんだ……」
「で、話になんないから、
『いや、タクヤくんの事を訊きたいだけ。
取り敢えず、今はそれだけ教えて!』
って言って、タクヤくんの写真とか住んでるマンションとか色々訊いた訳。
ってか、会えて良かった。
今日、会えなかったら、もうマコっちゃんの事とか無視して、アタシもバックれようかなって思ってたからさ」
「バックれる?」
りんの口から出てきたマコトを見捨てるその言葉に、僕は眉を寄せる。
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