●さよならByeBye

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●さよならByeBye

1月を過ぎ、2月になっても、マコトは僕や広田といった友達や彼氏に連絡を取ろうとはしなかった。 そのせいか、広田はマコトの事などすっかりと忘れてしまったかのように新しい出会いを求め、合コンやナンパなど色々と広田らしく動いていた。 そして、僕の方もキヨミと会う度に恋仲が深まっていき、身勝手なマコトの失踪を心配しながらも、どこかその失踪に感謝もしている始末であった。 「マコトさん、無事だったらいいね」 キヨミも言葉ではこう言うが、実はマコトに再び現れて欲しくない、という本心が言葉の端々や振る舞いに時折洩れ出てきていた。 信也が主催する「根本会」においても、マコトの話題は稀にだが出てきた。 「タクヤ、お前マコトちゃんとは最近連絡取り合ってんのか?」 信也の問い掛けに、僕は「いや、してない」と首を振った。 「じゃ、結局この飲み会にマコトちゃんが来る事は無さそうだな。 広田のヤローは、『アイツとは終わった』とか言いやがるし、友達のお前にしてもそんな状態じゃあな」 信也は残念そうに、肩をすくめる。 そして、この信也の振る舞いに、僕の隣に座っていたキヨミが露骨に不機嫌な顔つきとなったのは、言うまでもない。 バレンタインデーは、キヨミからデパートで買ったと思われる生チョコをもらった。 「手作りとか面倒くさいし、お店で買った方が絶対美味しいでしょ」 合理主義のキヨミらしいセリフだな、と僕は思った。 「ホワイトデーは、タクヤくん手作りのチョコお願いします」 キヨミはカップに入ったコーヒーを一口飲むと、頭を下げる。 「おい、待てや。 自分はデパートで出来合いのチョコを買ってきてんのに、俺には手作りを要求してくんのかよ」 「えー、だってタクヤくんの手作りって想像出来ないから。 ちょっと食べてみたいな、と思って」 「チキンラーメン作るのがやっとの俺に、手作りのチョコとか作れる訳がねえだろが」 僕が笑いながら言葉を返していたその時、スマートフォンが身震いし、持ち主である僕に電話の着信を告げた。 「別に取っていいよ」 キヨミを一瞥し、電話を取る許可を僕はもらうと、カーゴパンツのポケットからスマートフォンを取り出す。 電話の主は、信也であった。 「はい」 同居しているというのに、わざわざ電話を掛けてくる信也の行動を不思議に思った僕は、首をかしげながら電話を取った。
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