●悲しみの果て

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●悲しみの果て

「お前、ホントふざけんなよな」 「根本会」で顔を合わせた広田が僕に発した第一声は、憤りの言葉であった。 しかし、激怒という訳ではないのか、広田のその顔には笑みすらこぼれていた。 「だから、それに関しては大学で会った時に謝っただろ。 申し訳ない事をした、ってよ」 「いや、有岡よぉ。 お前、俺がマコトについて言ってこなけりゃ、そのままバックれるつもりだったんだろが。 適当ぶっこいてんじゃねえよ。 こっちは、犯罪者になるトコだったんだぞ」 「まぁまぁ」 ここで信也が、僕と広田の会話に割って入ってくる。 「マコトちゃんは残念な結果になっちまったけど、お前らは直接被害を被った訳じゃねえだろ。 今は取り敢えず、それを良しとしようぜ」 「被害ゼロじゃねえよ。 お巡り、俺のトコにも来たんだぞ。 『ちょっと、話が訊きたい』って 正直、面倒くさい事この上なかったぞ。 まぁ、マコトが『援デリ』ってな風俗をやってた、とか詳しい話はそのお巡りの話で知ったんだけどな」 「何だよ、広田。その『援デリ』っての?」 ここで森が缶ビールを飲み干すと、広田に尋ねる。 「素人のデリヘルだよ。 俺もさすがにデリヘルは手は出した事はねえけど、まさかマコトがそういうのをやってるとは思わなかったよ。 しかもマコト、女子高生にそれさせてたんだろ? 事情は知んねえけど、とんでもねえ女だよ。 マコトのヤロー」 「確かにとんでもないけど、女子高生の側も何かそういうのをやらなきゃいけない事情があったかもだろ。 だから、簡単にマコト一人を悪とは言えないよ」 「いや悪だろ、どう考えても」 僕のマコトの擁護に、広田はせせら笑いを浮かばせた。 「いくら、事情があるっつっても未成年にそんな事やらせてる時点で、もうアウトだっつぅーの。 もう、あの女は悪党確定なんだよ」 広田も森に続いて缶ビールを飲み干すと、蔑むように口元を曲げながら続きを語っていく。
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