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●出逢った頃のように
6時過ぎに自分の仕事が終わると、僕はまだ見積りやら資料の作成など何かしら作業をしている同僚を尻目に会社を後にした。
そして、そのまま松川駅に向かう電車へと乗ると、僕はマコトに対してどんな言葉を切り出すべきか、iPodで米倉翔吾を聴きながら思案した。
電車が、松川駅に到着した。
僕は駅を出ると、昨日行った「大吉」という創作居酒屋を、歩きながら探す。
「大吉」は、程なくして見つかった。
暖簾もかかっている事から、別に休業という事は無さそうだ。
固唾を飲み込み、深呼吸をして僕は自分の気持ちを整えると、意を決して店の引き戸を開けた。
「いらっしゃいませ」
僕が引き戸を開けると同時に、昨日と同じくマコトの声がすぐさま店内に響き渡った。
「あの……」
後ろ手で引き戸を閉めると、僕はカウンター内にいるマコトを見据えたまま、言葉を切り出す。
「……今日は俺、一人」
「あっ、そうなんだ」
マコトは微笑を浮かばせると、「どっか適当に座って」と、僕に言った。
7時前という時間であるにも関わらず、客は僕一人であった。
この店がどれだけ繁盛しているのかは僕には分かりかねるが、マコトと二人きりという僥倖を嬉しく思った僕は、少しでもマコトと会話が出来るよう、カウンター席へと腰掛けた。
「ビールでいいの?」
マコトがカウンター内から僕に目を向け、尋ねる。
「あっ、うん。瓶ビールちょうだい」
僕は頷くと、マコトからグラスと瓶ビールをカウンター越しに受け取った。
「いただきます」
僕は手酌でビールをグラスに入れると、その琥珀の液体を一息に飲み干す。
「マコトには、色々訊きたい事があったんだ」
空いたグラスに僕は再びビールを注ぐと、カウンター内で仕込み作業を行っているマコトに言葉を投げ掛ける。
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