●愛がもう少し欲しいよ

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●愛がもう少し欲しいよ

10年ぶりの、マコトとの再会。 それは僕に、青春時に抱いていた生きる活力を、再びもたらした。 家と会社の往復、という代わり映えの無い日常も、マコトと顔を合わせて会話が出来る、という事実が、僕に明日を待ち遠しくさせ、そして実際に僕はマコトに会いに行く為、何度も「大吉」へと通った。 「この大吉って店の名前。 昔、タクヤが開いてくれた合コンに個性的な男の子がいたでしょ? その子が口癖で『ダイキチ!』って言ってたのが凄い印象に残ってて、縁起も良さそうだしつけたの」 ある日、マコトは微笑を浮かばせながら、僕に屋号の由来を語ってくれた。 その話を聞いた僕は、この数奇な縁を嬉しく思うのと同時に、森に少しだけ嫉妬をしたのは言うまでもない。 その「大吉」の由来となった森だが、僕はその森と先日の白石の結婚式以来、再び会う事となった。 信也が以前口にしていた、かつての「根本会」の面々を集めた飲み会。 それが、実際に開催される運びとなったのだ。 信也のバイタリティーは、30歳を迎え、大人になった今でも健在であった。 LINEグループで皆の空いている日取りを確認した信也は、続けて皆の食べたいモノをざっくりとリサーチすると、すぐに店を予約した。 『ここ、結構いい感じの刺身出してくれんだよ! 鍋も海老と蟹がふんだんに使われてて旨かったし、みんな絶対気に入ると思う!』 信也から送られてきたLINEに、僕を含むLINEグループの面々は『楽しみにしてるよ!』という返信を行うと、飲み会の日を心待ちにしながら仕事やプライベートをこなしていった。 そして、11月初旬。 約束した飲み会の日が、ついにやって来た。 田渕や森。 信也、白石、キヨミといった面々は、外見こそ年相応であるものの、中身は大学時代に「根本会」でバカ騒ぎしていた当時のまま生き生きとしていた。 「話は琴音から聞いてましたけど、実際にこのメンバーが集まったら凄いエネルギーを感じますね」 今回、初参加となった白石の旦那さんは、熱量を持って当時の事を語るメンバーに完全に圧倒されていた。 元来、淑女である白石が選んだ爽やかな彼としては、この「根本会」の空気は少々独特なモノであったのかもしれない。 「2ヶ月ぶりだね、タクヤくん」 そして、僕の横に座っていたキヨミは、この10年で身につけたモノなのか、大人のあざとさを体現するかのような微笑を浮かばせながら、言葉を掛けてきた。
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