616人が本棚に入れています
本棚に追加
/416ページ
●LOVE Re-Do
「マコトは彼氏とかいないの?」
休みが終わり、迎えた月曜日。
僕は松川にある「大吉」に行くと、しらすかけご飯を食べながらそれとなくカウンターにいるマコトに訊いた。
「どうしたの、いきなり?」
マコトは答えず、ごまかすように笑みを浮かばせるのみであった。
「いや、ちょっと気になってよ。
そういや、マコトからそういう話を聞いた事がないな、って思って」
店内の客は、僕以外にはパーカーを着た女の子のみであった。
その女の子は、以前のマコトの言葉を証明するかのように、500円玉をカウンターの上に置きながら、しらすかけご飯をむさぼるように食べていた。
「彼氏ねえ……、いないよ」
カウンターの向こうからマコトは答えると、肩をすくめる。
「今は一人だよ。
っていうか、何でまたそんな事訊くわけ?」
「俺と付き合わないか」
僕は箸を置くと、マコトの目を真っ直ぐに見据えながら言った。
「冗談……」
マコトは笑うと、後ろで束ねているにも関わらず、髪をかき上げる仕草をする。
「冗談やめてよ。
タクヤも知ってると思うけど、私は前に結構色んな事をしてきた人間だよ。
そんな人間と付き合ってもロクな事が無いし、やめといた方がいいって」
「マコトは、俺の事が嫌いなの?」
僕は、さらにマコトに食らいつく。
同時に、カウンターの端にいた女の子がしらすかけご飯を食べるのをやめると、冷やかすように、ヒュー、と口笛を吹いた。
「いや、嫌いって訳じゃないけど……」
突然の僕の告白に動揺しているらしく、マコトはしばらくカウンター内を右往左往する。
「でも、私と付き合うってなると、多分タクヤが傷つくよ。
私、普通の生活を送ってきた人間じゃないからね。
もし、私と付き合ったとしても多分タクヤはいつか私から離れていくよ。
この距離感がベストなんだよ、私達は。
前は、SNSで繋がった友達。
今は店の女将と常連さん、って関係がね」
最初のコメントを投稿しよう!