●LOVE Re-Do

1/7
616人が本棚に入れています
本棚に追加
/416ページ

●LOVE Re-Do

「マコトは彼氏とかいないの?」 休みが終わり、迎えた月曜日。 僕は松川にある「大吉」に行くと、しらすかけご飯を食べながらそれとなくカウンターにいるマコトに訊いた。 「どうしたの、いきなり?」 マコトは答えず、ごまかすように笑みを浮かばせるのみであった。 「いや、ちょっと気になってよ。 そういや、マコトからそういう話を聞いた事がないな、って思って」 店内の客は、僕以外にはパーカーを着た女の子のみであった。 その女の子は、以前のマコトの言葉を証明するかのように、500円玉をカウンターの上に置きながら、しらすかけご飯をむさぼるように食べていた。 「彼氏ねえ……、いないよ」 カウンターの向こうからマコトは答えると、肩をすくめる。 「今は一人だよ。 っていうか、何でまたそんな事訊くわけ?」 「俺と付き合わないか」 僕は箸を置くと、マコトの目を真っ直ぐに見据えながら言った。 「冗談……」 マコトは笑うと、後ろで束ねているにも関わらず、髪をかき上げる仕草をする。 「冗談やめてよ。 タクヤも知ってると思うけど、私は前に結構色んな事をしてきた人間だよ。 そんな人間と付き合ってもロクな事が無いし、やめといた方がいいって」 「マコトは、俺の事が嫌いなの?」 僕は、さらにマコトに食らいつく。 同時に、カウンターの端にいた女の子がしらすかけご飯を食べるのをやめると、冷やかすように、ヒュー、と口笛を吹いた。 「いや、嫌いって訳じゃないけど……」 突然の僕の告白に動揺しているらしく、マコトはしばらくカウンター内を右往左往する。 「でも、私と付き合うってなると、多分タクヤが傷つくよ。 私、普通の生活を送ってきた人間じゃないからね。 もし、私と付き合ったとしても多分タクヤはいつか私から離れていくよ。 この距離感がベストなんだよ、私達は。 前は、SNSで繋がった友達。 今は店の女将と常連さん、って関係がね」
/416ページ

最初のコメントを投稿しよう!