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●根本会
下宿先であるマンションの部屋のドアを開けると、真っ先に出汁の匂いが僕の鼻孔を突いた。
同時に、狂人めいた男子学生の騒ぎ声が、和太鼓のように僕の鼓膜を激しく叩く。
「……もう、皆、集まってんのか」
玄関で靴を脱ぎ、リビングに足を踏み入れると、そこには大学や高校で知り合った仲間が数人、鍋の載ったテーブルを車座で囲っていた。
「おい、琴音ぇー。
これ、ちょっと運んでくれやぁ」
信也の声に紅一点の白石琴音は立ち上がると、キッチンへと行き、そこから白菜や豚肉といった鍋の具材を持ってくる。
僕とルームシェアをしている根本信也が、不定期に開催する「根本会」
それが、まさにリビングで行われていたのだ。
「なんだ、タクヤぁ。
お前、結局マコトって子とメシ、食って来なかったのかよ?」
信也はキッチンから顔を出すと、ニヤついた笑顔でもって僕に向かって訊いてきた。
「……今日はどうしても外せない用事があるから帰る、って言われた」
僕は苦笑でごまかすと、既に座っている学生らをかき分け、テーブルの前へと座る。
「有岡くん、ビールでいい?」
白石が僕に訊く。
「うん」
僕は頷くと、参加費である3000円を白石に支払った。
「なんだよ、お前。
俺、押し切って無理矢理メシ食ってこい、って言っただろ」
缶ビール片手に信也はリビングへと入ってくると、すっぽりと空いている上座へ座り、白菜やネギといった具材を菜箸で次々と鍋の中に放り込んでいった。
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