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●Season Train
──迎えた、夏フェス当日。
電車を乗り継ぎ、新幹線の停車駅で降りると、僕はその新幹線のホーム上でマコトが来るのをスマートフォンを触りながら待っていた。
新幹線の停車駅に電車で向かっている最中、マコトから
『少し、遅れる!! ゴメン!!』
というLINEが、僕の元に送られてきていた。
そして、待ち合わせ時間を10分程過ぎた辺りで、宣言通り遅れてきたマコトは慌てた様子でエスカレーターを駆け上がり、僕の方に駆け寄ってきた。
「ゴメン、微妙に寝過ごした! 待った?」
マコトは、息を切らしながら僕に言う。
「俺は別にいいけど、新幹線は待ってくれないよ」
スマートフォンで時刻を確認すると、僕は肩をすくめた。
「っていうかさ、朝ごはん買ってきていい?
私、起きてほぼそのままで来たから、朝、何にも食べてないんだ」
「いいよ、行ってきて。
じゃあ、俺はココで待っておくから」
「えっ、タクヤは一緒に来ないの?」
「新幹線が来たら、先に座って席を取っておくよ。
俺がマコトの買い物について行ってる間に新幹線が来て、二人掛けの席を取り損ねたら、微妙に凹むだろ?
それに、朝メシなら俺はもう既に下の売店で買ったよ」
僕は右手に持っていたカツサンドを持ち上げ、マコトに対して見せた。
「ちゃっかりしてるなぁ、タクヤは」
「マコトが、しっかりしてなさすぎなんだよ。
つーか、行くなら早くしてくれよ。
新幹線、もう10分くらいで出る時間なんだよ」
「分かった、じゃあすぐ買ってくるね!
あっ、荷物置いておくから、新幹線が来たらコレ、席に置いといて!」
マコトは両肩に掛けていたリュックサックを降ろし、それを僕に預けると、猿のように身軽な様子で階段を駆け降りていった。
マコトが階段を降りて1分も経たない内に、新幹線がホームに滑り込んできた。
僕は、自分の荷物とマコトのリュックサックを両手に持ちながら新幹線に乗り込むと、荷物を二人掛けの席に置き、マコトが来るのを再びスマートフォンを触りながら待っていた。
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