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想いが叶ったと思ったのに、本当は全然叶ってなんかなかった。
隣を歩いてくれても、手を繋いでくれても、触れれば触れるほど、先輩は遠くなる。
それなら、憧れて焦がれながら、そっと見つめているだけの方が、どれだけいいか。
これ以上好きになるのが、怖いのだ。心が侵されていくのが、たまらないのだ。
大好きだから。大好きだからこそ。わたしは今日、先輩にさよならを告げる。
「先輩。わたしと、別れて下さい」
もう一度、空気に声を乗せた。
先輩はゆっくりと瞬きを一つ零すと、口の端をそっと持ち上げて。
きっともうすぐ、『いいよ』って言うのだろう。
泣きたくなるくらいに綺麗な笑顔で、先輩はきっと、『いいよ』って言う。
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